アンケートの回収率とは?回収率を高める具体的な5つのポイント

2023年06月02日

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回収率とは、アンケートを配布した全体の数に対して、有効な回答を返した人数の割合です。例えば、100人にアンケートを配布し、そのうち50人が有効な回答を返した場合、回収率は50%となります。

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とくに郵送調査や留置調査といったオフラインでの調査において、回収率はコストを最小限におさえながら信頼できる調査を行うための1つの指標となります。

この記事では、アンケートを実施する前に知っておきたい、回収率やサンプルサイズの目安、そして回収率が高い良質なアンケートを作成するための具体的なポイントを紹介します。

回収率は、アンケートで必要なサンプルサイズを確保するために重要

回収率とは、アンケートを配布した全体の数に対して、有効な回答を返した人数の割合です。たとえば、あるアンケートを1,000通配布し、そのうち400通が有効回答だったとすると、回収率は40%になります。

◆回収率の計算式

回収率=(回収した有効回答数 ÷ 配布したアンケート数)× 100

この式で、回収した有効回答数とは、アンケートに回答があり、かつ欠落や誤りのない回答(有効回答)のみを指します。そのため、回答自体はあっても、明らかに内容が整合していなかったり、必要な回答がされていなかったりといった不完全な回答は省いて考えます。

image02_回収率とは、アンケートにおける有効回答の割合.png

回収率が高く必要なサンプルサイズが確保できた場合に、母集団全体との相違が少なくなり信頼性の高いデータと言えます。

「回収率が高い」=「信頼性が高い」ではない

「アンケートの回収率が高ければ、信頼性が高い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、「回収率が高い」=「信頼性が高い」とは一概に言えるものではなく、注意が必要です。

「信頼性が高い」とは、何度同じアンケートを行っても、同じような結果が得られることを指します。同じアンケートを行ったはずなのに、得られた結果に大きく差があるとき、信頼性が高いとは言えません。これに対して、回収率が高いとはアンケートを配布した数に対して有効回答の割合が高いことを指します。

image03_回収率が高い≠信頼性が高い.png

例えば、ある政策についての賛否を500人に対して3度に分けて調査したとき、あるリサーチャーAの調査では、1回目で200人が賛成、2回目は400人が賛成、3回目には100人が賛成だったとします。しかし、別のリサーチャーBが同じように3度に分けて調査を行ったときは、1回目調査で250人、2回目は280人、3回目は230人という結果になったとします。Aの調査では調査ごとに大きく差が出ていますが、特に想定される要因がなければ結果には違和感があり、なにか調査プロセスに問題があったのではないかと考えられます。

◆例

 
1回目
2回目
3回目
A
200
400
100
B
250
280
230

信頼性とはこのように、何度か同じ調査をおこなってもブレの無い結果が得られることであり、回収率と直接の関係はありません。

ただし、回収率が悪いことで結果にバイアスが生じ、信頼性の低い調査となってしまうことはあります。バイアスとは、回答の偏りのことです。

例えば、ある政策の賛否について、実際の集団では半分ずつの比率であるのに、回収できた回答が少なかったために、たまたま賛成している人に偏ってしまうような場合があります。

image04_回収率が低いことでバイアスがかかる可能性も.png

多くのアンケートが全数調査ではなく、一部を抜き出して行うサンプル(標本)調査である以上、多少の誤差は避けられないものですが、誤差が大きすぎれば信頼性が揺らぎます。

調査目的に対して妥当な回答数を確保するためにも回収率の高さが重要です。回収率が高ければ、母集団全体の意見との誤差が少なくなるという訳ではない点には注意しておきましょう。

サンプルサイズとは1度抽出したサンプル(標本)におけるデータの個数

調査の目的に対して十分な回答数を得たいのに、回収率が低く十分な回答数が集まらないことで、結果として信頼性が低くなってしまうことは避けるべきでしょう。ただし、信頼性の高い調査のためには、前提として回収率よりも母集団に対しての回答数が妥当かどうかのほうが重要です。

例えば、実際の対象となる集団が1万人想定されるのに、例えば200人にしかアンケートの配布を行わず、またさらに100人からしか回答が得られていないのだとすれば、母集団を十分に代表する意見が収集できたとは言えず、偏りのある結果となってしまう可能性が高まります。

アンケートでよくある標本調査(サンプリング)においては回答数のことを、サンプルサイズと呼びます。すこし回り道に感じるかもしれませんが、信頼性の高いアンケートを行うためにはサンプルサイズがどういうものなのかも確認しておきましょう。

サンプルサイズとは、統計的な調査や実験で調査対象の一部(サンプル)として選ばれる個体数やデータ数のことです。調査の目的や仮説、調査対象の母集団の大きさ、調査の信頼度や有意水準などに応じて決定されます。

調査に最適なサンプルサイズを求めるには、信頼水準や許容誤差といったこまかな数値を設定する必要があります。具体的な方法は「サンプリングとは?統計調査での活用法や種類、注意点を解説」の記事で詳しく説明しています。精密な調査を行いたい方はぜひご覧ください。

企業や団体で実施するような多くのマーケティングリサーチや学術調査を目的としたアンケートにおいては、コストと誤差のバランスの良さから400サンプルを一定の目安にする場合も多いようです。400サンプルを目標としてあらかじめ予想される回収率が50%の場合、800人に配布します。

◆予想回収率と必要サンプル数

image05_アンケートの予想回収率と必要サンプルサイズ.png

表を見れば分かるように、あらかじめ高い回収率が見込まれる場合は、アンケートの配布数を最小限にできます。特に、郵送調査や留置調査、訪問調査といったオフラインにおける調査においては、アンケート配布のコスト・手間が多いため、正確な調査結果把握のためにも一定以上の回収率が求められます。

なお、Webアンケートの場合、ほとんど回収率は問題になりません。なぜならWebアンケートでは、充分な回答が得られない場合、目標とする回収数を確保するまで追加配信を行う場合が多いためです。

アンケートでの回収率の目安の例

自社でアンケートを実施するときに、コストの検討や調査プロセスの評価のためにも、どのぐらいの回収率を見込めるのか、また見込むべきなのかという点について、気になる方は多いかもしれません。

しかし、残念ながらアンケートにおいて「これだけ回収率が高ければ良い」という数値や目安は一概には言えません。前述したように、アンケートにおいては母集団に対してのサンプルサイズが重要であることと、回収率は、業界や調査対象、調査の目的、方法、内容、フォーマットなどによって異なるため単純な比較が難しいことが理由です。

一番良いのは、過去に実施したアンケートや類似事例からある程度推測することです。ただし、良い事例が無い場合も多いでしょう。そこで、アンケートにおける回収率を示す事例として、公的な2つの調査の回収率を紹介します。

例1.令和4年度⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査における回収率は、合計で64.6%

内閣府が毎年実施している「令和4年度青少年のインターネット利用環境実態調査」の回収率は64.6%でした。

◆調査概要

目的 青少年のインターネット利用環境整備に関する基礎データを得ること
実施機関 内閣府
期間 毎年11月~12月頃
対象 満10歳から満17歳の⻘少年(5,000⼈)

調査方法は、個別⾯接聴取法、訪問配布訪問回収法、Web調査法、郵送回収法の順に優先して行われましたが、個別面接聴取法よりも訪問配布訪問回収法の方が回収率が高い結果となりました。調査法別の回収率は以下のとおりです。

◆調査方法別の回収率

個別⾯接聴取法 19.6%
訪問配布訪問回収法 31.6%
Web調査法 9.0%
郵送回収法 4.4%

例2.令和2年度の国勢調査の回収率は、約70%~80%

令和2年度の国勢調査では、インターネット・郵送含めて81.3%と回収率が公開されています。(※人口速報集計結果の世帯数を基に算出した回答率)

◆調査概要

目的 国勢調査
実施機関 総務省統計局
期間 2020年9月14日~10月20日 ※新型コロナウィルス感染症・7月豪雨の影響により一部地域で延長あり
対象 調査時において、本邦内に常住している者

オートロックマンションなどの調査困難地域の増加や近所付き合いの減少などにより、訪問調査や聞き取り調査が困難になっている状況で、近年回収率は減少傾向でした。しかし、令和2年では、回答率の低い傾向にあった都市部でのPRに力を入れるなどした結果、インターネットでの回収率と郵送での回収率がどちらも上昇し、全体の回収率が上がるといった傾向が見られました。

国勢調査の回収率

  平成27年(最終結果) 令和2年(最終結果)
インターネット
36.9%
39.5%
郵送
34.1%
41.8%
合計
70.0%
81.3%

引用:総務省統計局「国勢調査

ここで例に取り上げた2つの調査は、80%と高い回収率となっていましたが、調査によっては回収率が20%〜40%といったものも少なくありません。回収率のみではアンケートの信頼性・妥当性は測りづらいため、あくまで目安として考えましょう。

回収率が高いアンケートを作成する5つのポイント

回収率を向上させることで、サンプルサイズを確保しやすくし、アンケートのコスト削減につなげやすくなります。回収率は、回答者へのアプローチ方法やアンケート内容、フォーマットなどを見直し、改善することで向上できる可能性があります。

一般的に、アンケートの回収率に影響を与える要因は以下のとおりです。

  • 調査目的と配布方法
  • 実施者・実施団体の知名度・信頼度
  • アンケート調査の回答者
  • 設問数の多さアンケートの回答数の長さ
  • 回答することで得られるインセンティブ
  • アンケートを実施するタイミング

大きな方針としては、回答者にとって魅力的なアンケートにすることが重要です。具体的に5つのポイントに分けて見てみましょう。

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ポイント1.回答する負担の少ない内容に変更する

アンケートの冒頭であらかじめ見通しを提示しておくことで、回答者の心理的負担を軽減しやすくなります。

◆アンケート冒頭に記載すべき項目

  • 設問数
  • 回答にかかる目安時間
  • 残りの設問数

このとき、回答時間は10分以内を推奨します。一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会の「インターネット調査ガイドライン第2版」によれば、PC・スマートフォンを問わず、回答時間が10分を超える1回あたりのアンケートに対し「回答してもよい」と考える人が2~3割しか存在せず、大多数の回答者が長時間の回答を負担に感じる傾向が明らかになっています。

image07_インターネット調査ガイドライン第2版.png

引用:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会「インターネット調査ガイドライン第2版

また、質問内容を工夫することでも、回答者への負荷を軽減し、途中離脱を防ぎやすくなります。

◆回答者の負荷を軽減するポイント

  • 設問数を減らす(できる限り20問以内に)
  • 選択肢の数を減らす
  • 質問文を短くする
  • 自由回答やマトリクス設問を減らす
  • プライバシーに関わる質問を無くす/減らす

プライバシーに関わる質問は心理的ハードルが高く、特に配慮が必要です。住所や郵便番号、会社名、位置情報、閲覧・検索履歴、年収、保有資産、病歴などのセンシティブな情報に関わる質問は、最低限に留めるべきです。やむを得ず入れる必要がある場合は、アンケートの最後に尋ねることで、序盤で離脱する可能性を低下できます。

アンケートに回答しない理由を仮説立てし改善を行い、テストを何度か行うことも有効です。似たような質問がないか、優先度の低い質問はないかを確認しても、どうしても設問数や回答時間を減らせず、回答負荷が高くなってしまう場合は、謝礼の増額などを検討するとよいでしょう。

ポイント2.回答してもらいやすい形式・タイミングにする

アンケートの形式や方法、タイミングによっても回収率は左右されます。

◆アンケートにおいて回収率を改善できるポイント

形式
  • 件名・導入文を目立たせる
  • 回答のメリットを強調する
方法
  • マルチデバイス(PC・スマホ)で回答できる
  • 回答者の属性がよく使うWebサイト・場所でのモニター募集
タイミング
  • イベント・セミナー後すぐなど、記憶が残っている期間での配布
  • 対象回答者が回答しやすい時間帯での配布

ポイント3.回答者のモチベーションを高める

アンケートの目的や背景、回答したことがどのように役立つかなどを明確に伝えることで、回答者の興味を呼びおこし、重要であると感じてもらいやすくなります。「企業や社会に役立つ」「回答することが楽しい、達成感が心地よい」という理由で協力してくれる回答者も少なくありません。

◆アンケートの目的を強調し、回答を促す例

この調査は、今後の改善のための貴重な資料となります。統計的分析など十分な検討をするには、毎年100名以上(回答率60%以上)の方の回答が必要です。調査の目的をご理解いただき、ご協力をお願いいたします。

回答に対する報酬を用意することも有効です。実際、商用アンケートのほとんどでプレゼント券やポイント、商品サンプルなどを用意しています。もしアンケートの報酬が業界水準よりも低い場合、回収率に大きく影響することもあります。

報酬の渡し方によっても回収率が変動することが明らかになっています。東京工業大学研究グループの「アンケート調査回収率に関する実験研究」によれば、事前に報酬を送ったグループでは、無報酬の場合に比べて約3倍近くにまで回収率が高くなりました。

◆アンケートの報酬有無・タイミングに関する実験

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引用:萩原剛・太田裕之・藤井聡「アンケート調査回収率に関する実験研究:MM参加率の効果的向上方策についての基礎的検討

ただし、事前に報酬を送付する場合、報酬のみを受け取りアンケート回答がされないリスクがあります。実際に実施する場合には、上記を防ぐ防止策も合わせて講じる必要があるでしょう。

ポイント4.信頼できる調査であることを伝える

より多くの人に安心して回答してもらうために、信頼できる調査であることを伝えると良いでしょう。例えば、調査実施元、調査機関の明示や取得したデータを調査の目的以外には使用しないこと、個人情報の取り扱いを記載を行うことが有効です。回答者に不信を抱かせないことで回答途中の離脱を防ぎ、回答率の向上を期待できます。

回答者の信頼感を高めることで、センシティブな情報についての質問でも回答してもらいやすくなる可能性もあります。

ポイント5.フォローアップを行う

一度配布したアンケートに回答してもらえなかった場合でも、フォローアップを行うことで、回答を促せる可能性があります。例えば、リマインドメールを配布する、郵送する、電話をかけるなどの方法はよく行われています。

ただし、一般的にWebアンケートで回収数が少ない場合には、追加配信を行ってサンプルサイズを確保するため、オフライン調査ほどフォローアップを行わないこともあります。

まとめ|さまざまな工夫により、アンケート調査の回収率を向上できる

回収率は、アンケートのコストを最小限に抑えながら正確かつ信頼できる調査を行うための1つの指標です。特に郵送調査や留置調査、訪問調査といったオフラインにおける調査においては、回収率の高さは重要です。

回収率を高めるためのポイントとして紹介した5点は、アンケートに回答してもらいやすくしてもらうための汎用的な工夫であり、良質な回答を得るためにも有効です。ぜひ企業におけるアンケート作成にお役立てください。

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よくある質問

Q1.アンケートの回収率の目安は?

アンケートにおける回収率の目安は一概には言えません。回収率は、業界や調査対象、調査の目的、方法、アンケートの内容、フォーマットなどによって異なり、単純な比較が難しいためです。

公的な調査の回収率としては、内閣府の「令和4年インターネット利⽤環境実態調査」においては64.6%、総務省統計局の「国勢調査」においては約70%~80%という結果が示されています。ただし、調査によっては、回収率が20%〜40%といったものも少なくありません。

詳しく知りたい方は「アンケートでの回収率の目安の例」の章をご覧ください。

Q2.アンケートの回収率を上げる具体的なポイントは?

アンケートの回収率を上げるには、以下の5つのポイントに気をつけて設計・実施すると良いでしょう。

  1. 回答する負担の少ないフォーマットや内容に変更する
  2. 回答してもらいやすいフォーマット・方法・タイミングにする
  3. 回答者のモチベーションを高める
  4. 信頼できる調査であることを伝える
  5. フォローアップを行う

詳しくは「回収率が高いアンケートを作成する5つのポイント」の章をご覧ください。

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