PSM分析とは?具体的な方法やメリット・デメリットなどを解説

2021年10月01日

分析

消費者に受け入れられるために価格を下げても、利益が少なくなるだけでなく場合によっては安すぎて信頼を損ねることすらあります。 とはいえ、価格が高すぎても受け入れられにくいもの。 商品やサービスの価格設定は、多くの方にとって悩ましい問題なのではないでしょうか?

そこでおすすめなのがPSM分析です。 PSM分析とは、特定の質問を通して商品やサービスの適正価格を調べる分析手法です。

PSM分析を行うことで消費者に受け入れられやすい価格帯が算出され、適正価格を導き出すことができます。価格設定で悩んでいるという方にぜひ活用してほしい分析手法です。

  • PSM分析の概要
  • 具体的な方法
  • PSM分析を活用するメリット・デメリット

PSM分析とは?

PSM分析
「Price Sensitivity Measurement(価格感度測定)」の頭文字を取った用語。 消費者への質問を通じて、自社サービス・商品の適正価格を検討したいときに特に用いる統計分析手法。

企業側は「なるべく高く商品を売りたい」と考えますが、消費者は「なるべく安く買いたい」と思うものです。

PSM分析では、価格についての簡単な4つの質問を行うことで消費者から受け入れられやすい価格を算出することができます。 市場に受け入れられやすい適正価格を知ることが出来るので、ビジネスの大きな助けとなります。

PSM分析は価格受容性調査のひとつ

PSM分析は、大きく言えば「受容性調査」のひとつです。

受容性調査の関係性

受容性調査とは、消費者が自社商品やサービスに対してどのようなイメージを持って受け入れているのか調べる調査のことです。 受容性調査の指標は、商品のコンセプトや販売価格など多種多様です。

◆受容性調査の例

  • 商品コンセプトをどのように感じるか?
  • この価格で買いたいと思うか?
  • 試作品の使い心地はどうか?

PSM分析とCVM分析の違い

受容性調査の中で、価格の受容性を調査するものが「価格受容性調査」です。 価格受容性調査には「PSM分析」「CVM分析」の2つがあります。

PSM分析
消費者への質問を通じて、自社商品の適切な価格設定を調査する。
CVM分析
あらかじめ設定した価格で、どの程度購入率が変動するかを調査する。

PSM分析では、消費者が許容できる価格帯を見つけることを目的とした分析手法です。 許容できる価格帯を明確にすることで、自社商品にふさわしい価格が設定しやすくなります。

一方CVM分析は「設定した価格帯でどれほどの購入率が見込めるか」を調査する分析手法です。 各価格帯における購入率の変化を想定することで、具体的な売り上げ予測が立てやすくなります。

PSM分析の活用シーン

PSM分析により導き出された適正価格は、商品に対して消費者が感じている「価値の大小」を金額に変換したものといえます。 つまりPSM分析によって消費者が商品に対して抱くイメージを正しく把握でき、消費者との間にある「価格感度へのズレ」を少なくし、最適な価格設定に繋がるのです。

例えば、消費者が「安物」と感じる価格帯を把握することで、ほどよくお得なイメージを与えつつ、安心した購買できる価格の設定が行えます。 このように、商品に対して消費者が感じるイメージをPSM分析によって調査することで、自社の目的や状況に合わせた価格戦略が打ち出せます。具体的には以下のような戦略です。

◆価格戦略の一例

値引きキャンペーン
下限価格よりも安くなりすぎないようにしつつ、期間限定で商品の値引きを行う
地域別に価格設定を変える
競争の激しい地域では価格を下げて、競争があまりない地域では価格を上げる
スキミングプライス戦略
新商品をあえて高値で販売し、市場に浸透してきたら徐々に価格を下げる
ブランディング戦略
機能性は一般的でも、デザイン性を重視しブランド価値を高めることで価格を上げる

従来の価格調査とPSM分析の違い

従来の価格調査とPSM分析には、下記のような違いがあります。

 

従来の価格調査 消費者に対して、価格に対し直接的な質問を行う。
例:「この商品が◯円なら買いますか?」
「この商品は使いやすいですか?」など
PSM分析 消費者に対して、定められた4つの質問を行う。

 

従来の価格調査では「単純質問」と呼ばれる、直接消費者に希望価格を調査し価格設定の参考にする手法が多く用いられていました。

消費者の多くは潜在的に許容価格帯を設定しています。 消費者が潜在的に設定している価格は「内的参照価格」と呼ばれ、内的参照価格の範囲内であれば、金額が変動しても購入する可能性があります。

しかし単純質問では「表面的な回答しか得られない」という問題があります。

例えば、以下の単純質問をされたとしましょう。

Q.男性向けの制汗剤(150ml)が3,000円で発売されたら、あなたは買いますか?

回答者が「少し高い」と感じても、実際に購入するわけではないので「買います」と回答することがあります。 反対に実際は3,000円でも買うにもかかわらず、「もっと安ければ買う」と回答することもあります。

つまり単純質問では、許容価格帯までは考慮されないため、実際の購入時をイメージした信頼性のあるデータを集めにくいのです。 その点PSM分析では、消費者が潜在的に考える許容価格帯も考慮に入っているため、より精度の高い価格設定が行えます。

PSM分析の具体的な方法

PSM分析は、以下に挙げる4ステップで行います。

図2.jpeg

1.消費者に4つの質問をする

PSM分析では、消費者が潜在的に考える許容価格帯を考慮に入れて調査を行います。そのため消費者に対し、特定の商品やサービスを提示した上で以下4つの質問をします。ニュアンスが伝われば文章自体は変えても問題ありません。

◆PSM分析で行う4つの質問

  • いくらぐらいから「高すぎて買えない」と思うか
  • いくらぐらいから「高い」と思いはじめるか
  • いくらぐらいから「安い」と思いはじめるか
  • いくらぐらいから「安すぎて買いたくない」と思うか

2.Excelでグラフ化する

消費者への質問を集計・まとめるためにExcelなどを活用して、アンケート結果をグラフ化します。

◆グラフ化の手順

  1. アンケート結果を集計して表にする
  2. 関数記入用の表を別のセルに作成する
  3. 関数を記入する
  4. グラフを作成する

なお今回は、架空の商品「X」の価格設定に関するアンケートを行ったとします。

1.アンケート結果を表にする

4つの質問項目ごとに、アンケート結果を表にして集計します。

アンケート調査結果1

アンケート調査結果

2.関数記入用の表を別のセルに作成する

関数記入用の表を別のセルに作成します。表の上部には基準となる価格を記入しましょう。

関数入力用の表

3.関数を記入する

PSM分析では【COUNTIF】【COUNT】関数を組み合わせて使用します。

使用する数式:=COUNTIF(範囲,検索条件)/COUNT(範囲) 範囲:アンケート項目ごとのデータ部分 検索条件:◯円以上(あるいは以下)の回答者 /COUNT(範囲):全体の数で割る

例えば、今回のセル上で「”高いと思いはじめる価格”に対して”100円以下”と回答した割合を知りたい」という場合、以下の数式となります。

=COUNTIF(B3:B42,"<="&J3)/COUNT(B3:B42)

COUNTIF

同様に他の数式も記入します。作成時の注意点は2つです。

◆数式を記入する際の注意点

  1. 範囲の部分は、計算したいセルに応じて変更する
  2. 検索条件の部分は、◯円以上は「”>=”&◯円」・◯円以下は「”<=”&◯円」

“安いと思いはじめる価格”に対して”100円以上”で回答した割合 =COUNTIF(C3:C42,">="&J3)/COUNT(C3:C42)

COUNTIF2

“高すぎて買えない価格”に対して”100円以下”で回答した割合 =COUNTIF(D3:D42,"<="&J3)/COUNT(D3:D42)

COUNTIF3

“安すぎて買いたくない価格”に対して”100円以上”で回答した割合 =COUNTIF(E3:E42,">="&J3)/COUNT(E3:E42)

COUNTIF4

表をすべて埋めたら、見やすいようにパーセンテージ表記に変更します。

パーセンテージ

4.グラフを作成する

関数を記入した集計表の全範囲を選択し、画面上部からグラフを挿入します。

折れ線グラフ

「折れ線グラフ」を選択すると、PSM分析結果のグラフが挿入されます。

psm分析結果グラフ

「縦軸=当てはまる消費者の割合」「横軸=価格帯」を表します。

3.グラフの交点の価格を把握する

PSM分析を活用した価格設定では、上記グラフの4つの交点が重要です。 4つの交点は、それぞれ下記の価格を表しています。

グラフの交点

上限価格(最高価格)

A点:上限価格(最高価格)
「これ以上高い価格を設定したら買わない」と感じる限界の価格

上限価格(最高価格)は企業としては利益率が高く望ましい価格ですが、消費者としては購入するか微妙なラインの価格です。

例えば、ジャガイモの価格を一般的な相場よりも高い「1個600円」に設定したと仮定しましょう。 このように消費者がイメージする相場よりも高い価格を設定すると、消費者にとってストレスとなります。

ただし以下のように、あえて上限価格を設定した方が効果が高くなる場合もあります。

  • 競合他社がいない
  • 他社にはない付加価値がある
  • ハイブランドなイメージで売り出したい

妥協価格

B点:妥協価格
「このくらいの価格なら買える」と妥協する可能性がある価格

妥協価格とは、消費者が納得して買える限界価格を指します。 消費者が普段から「この商品の価格は◯円くらい」と基準にしている価格に近くなります。 例えば傘が「1本1,000円」であれば、消費者の多くが妥当な価格と考えるでしょう。しかし「1本30,000円」になると、多くの方が「高い」と感じます。

妥協価格は、こうした消費者の心理的な基準価格に近づくものです。 自社の中でトップシェアを占める商品やサービス価格では、妥協価格が設定されることが多いです。

理想価格(最適価格)

C点:理想価格(最適価格)
消費者が一番抵抗を感じない理想的な設定の価格

理想価格とは、消費者が最もストレスを感じない価格のことです。 「高すぎて買えない」「安すぎて質が心配」といった価格面での不満や不安がないため、市場への浸透スピードも早いのが特徴です。 ただし、あくまでも「消費者」にとって理想の価格であるため、企業側が利益を見込めない価格になることもあります。

下限価格(最低品質保証価格)

D点:下限価格(最低品質保証価格)
これ以上安いと「品質に問題があるのでは」と疑われる価格

下限価格とは最低品質保証価格を指し、これ以上安いと商品やサービスの品質が疑われる価格です。 あまりにも安すぎる価格設定では、商品の品質や安全性が疑われます。

例えば正規価格「30,000円」の腕時計が「1,000円」で販売されているのを見ると、消費者は偽ブランドや不良品である可能性を考えてしまいます。 仮に下限価格で販売したとしても、商品1個あたりの利益率が低いため、特に固定費が大きい商品の販売には不向きです。

これらを考慮し、下限価格は主に以下のシーンで設定されます。

  • スーパーの特売セール
  • ディスカウント店の販売商品

許容可能価格帯の範囲内で価格を決める

許容可能価格帯

A点(上限価格)〜D点(下限価格)の間にある「許容可能価格帯(RAP)」の範囲内で価格を検討します。 PSM分析を用いて価格設定をする場合、この許容可能価格帯の範囲内から探すのが基本です。

PSM分析のメリット

PSM分析のメリットは以下の3点です。

  1. コストと顧客の要望のバランスを取った価格を検討できる
  2. 価格設定に根拠を持たせられる
  3. シンプルな質問のため回答が得やすい

h5タイトルが入ります

価格設定では商品開発にかかったコスト等も考慮する必要があります。しかしコスト面のみを意識すると、消費者に受け入れられにくい価格になってしまうリスクがあります。

PSM分析を活用し、消費者の許容可能価格帯を把握することで、

  • 消費者に受け入れてもらえる価格帯
  • 商品開発にかかったコスト

2つのバランスを考慮した価格を検討できるのです。

2.消費者の本音に近い価格が把握できる

PSM分析は単純質問よりも消費者に受け入れられやすい価格を把握できるのが特徴です。 単純質問では「10,000円のジャケットを買うかどうか?」というようなシンプルな図式がメインでした。

しかし実際の消費者の中には、以下のように考える方もいます。

10,000円なら購入すると答えたが、±3,000円くらいなら許容範囲である

単純質問ではこうした予算の幅までは考慮できません。 その点PSM分析では予算の幅も考慮できるため、消費者の本音に近い意見が分かるのが特徴です。 年齢・性別・地域・価値観…といったさまざまな属性やクラスターごとにアンケートを集計することで、さらに精度の高いPSM分析が可能になるでしょう。

3.シンプルな質問のため回答が得られやすい

PSM分析における4つの質問は、いずれもシンプルなものです。そのため、消費者からの回答が得られやすいのもメリットといえます。

普段から実施している消費者へのアンケート項目を変えるだけで、従来の価格調査よりも正確な結果が期待できます。

PSM分析のデメリット

PSM分析のデメリットは以下の3点です。

  1. 顧客の願望価格であり、必ずしも実現可能な値が算出されるわけではない
  2. 実価格設定において交点が「絶対の指標」になるわけではない

1.顧客の願望価格であり、必ずしも実現可能な値が算出されるわけではない

PSM分析で算出できるのは、あくまでも「顧客にとって最適な価格」です。 実際の価格設定では、開発費や人件費などのコスト面も考慮する必要があります。顧客の理想のみを価格に反映させると、自社の利益を最大化できません。

PSM分析によって算出した価格を参考にしつつ、開発コストや需要と供給のバランスなど、多方面の要素を考慮しながら価格を検討しましょう。

2.実際の購入率まではシミュレーションできない

PSM分析は、従来の単純質問よりは精度の高い回答を得られます。 しかし、交点の価格を参考にしても必ず狙い通りに購入されるわけではありません。

実際には、上限価格以上でも購入する人や、理想価格だとしても購入しない人などさまざまです。 交点を参考に価格を設定しても、必ず消費者の購買が期待できるわけではないことは把握しておきましょう。

3.価格設定において交点が「絶対の指標」になるわけでない

価格設定において交点が絶対の指標になるわけではありません。交点を参考に価格を設定しても、必ず消費者の購買が期待できるわけではないことは把握しておきましょう。

PSM分析を行う際に注意したいこと

PSM分析は以下の3点に注意して行いましょう。

  1. 価格の相場がわかるターゲットに聞く
  2. 価格の相場をイメージしにくい場合、先に目安を提示する
  3. 商品やサービスのスペック情報を詳細に伝えイメージしやすくしておく

1.価格の相場がわかるターゲットに聞く

価格の相場を把握している消費者に質問することで、アンケートの精度を高められます。 例えば、化粧品を購入しない人に「新商品の化粧品を高いと思うか?」と質問しても正確なデータは得られません。 4つの質問をする前に回答者に化粧品の購入頻度を確かめるなど、相場を把握しているかを確認しましょう。

2.価格の相場をイメージしにくい場合、先に目安を提示する

価格をイメージしにくい商品やサービスの場合、先に目安を提示しておきましょう。 例えば新しく「ハウスクリーニング事業」を展開するという場合、事前に競合他社のハウスクリーニング相場を伝えその上で自社サービスの独自性をアピールすると、回答者も相場がイメージしやすくなります。

3.商品やサービスのスペック情報を詳細に伝えイメージしやすくしておく

精度の高いPSM分析を行うためにも、商品やサービスにおける詳しいスペックを伝えておきましょう。 例えば新製品のフライパンを販売する場合、素材・軽さ・大きさなどを伝えることで他社製品との比較をしやすくなり、価格をイメージしやすくなります。 認識のズレも起こりにくくなるため、有効な回答が得られやすいでしょう。

まとめ

PSM分析の概要から、具体的な分析方法、活用するメリット・デメリットをお伝えしました。 PSM分析を活用することで、消費者と企業の双方にとっての適正価格が導きやすくなります。 PSM分析で消費者の許容可能価格帯を知ることで、価格戦略にも役立てられます。ぜひ自社や消費者の状況に合わせて活用してみてはいかがでしょうか。

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