ネットプロモータースコアの意味や自社の成長に役立てるポイントを解説

2023年02月10日

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ネットプロモータースコア(NPS®)は、顧客に対して「この商品は家族や友人にどれほど薦められるか」アンケートに回答してもらい、その結果から顧客ロイヤリティを計測する方法です。

ネットプロモータースコア(NPS®)は、顧客満足度(CS)よりも売り上げとの関係性が強いという意見もあります。そのため、自社の成長につながる知見をより確実に得たいと考えている方にはぜひ覚えてほしい手法の一つです。

本記事では、ネットプロモータースコア(NPS®)の意味やメリット、使いこなす方法を解説します。

ネットプロモータースコア(NPS®)とは

ネットプロモータースコア(NPS®)

ある商品のユーザーに、家族や友人にその商品(またはその商品を提供している会社)がどれだけ薦められるか11段階のアンケートを取り、その結果から顧客ロイヤリティを計測する方法

ネットプロモータースコア(NPS®)は、アメリカのベイン・アンドカンパニー社が提唱した方法です。アメリカのフォーチュン500のうち35%の企業が、ネットプロモーションスコアを採用していると言われています。

ネットプロモータースコア(NPS®)の実施は顧客ロイヤリティ向上に効果的

ネットプロモータースコア(NPS®)で計測する「顧客ロイヤリティ」は、「顧客が企業や商品に対して抱く愛着」を意味します。

顧客ロイヤリティの向上は、企業の安定した成長にとって重要なポイントの1つです。なぜなら、顧客ロイヤリティが高いほど、リピーターになってくれる可能性が高い上に、顧客自身が他の人に紹介してくれる確率が高まるためです。

一般に、新規顧客獲得より既存顧客のリピートの方が、獲得に必要なコストが少ないとされています。また、顧客自身が他の人に紹介してくれるため、新規顧客獲得に必要なコストが軽減されます。

既存の顧客との信頼関係を大切にするには、顧客ロイヤリティを高めることが重要です。そのためにもネットプロモータースコアを活用して顧客ロイヤリティを計測し、数値改善へと取り組むことで、安定した収益確保と企業の成長が期待できます。

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CS(顧客満足度)との違い

ネットプロモータースコア(NPS®)とよく比較される用語に、CS(顧客満足度)があります。CS(顧客満足度)とは、自社製品や顧客体験に対して、どれほど顧客が満足しているかを示す指標です。「家族や友人に薦めたいか」を問うネットプロモータースコア(NPS®)と違い、あくまでも自分が満足したかどうかを問います。

ネットプロモータースコア(NPS®)と違って、CS(顧客満足度)の結果は収益性との相関関係が薄いという意見もあります。

例えば、あるサービスの顧客満足度調査では、離反した顧客の80%が直前の調査で「満足している」と回答していたことが判明しました。背景には、「満足度」の意味が抽象的で、人によって大きく異なっていることが考えられます。中には、大きな不満がなければ「満足」と答える人もいるかもしれませんし、事前の期待度が高いために満足できなかった、というケースもあったのではないでしょうか。

そのため、今回はとりあえず満足したものの、他人に薦めるほどか、次回また使いたいかと言われると、そうでもないこともあり得ます。その場合、「満足した」と回答した人でも、リピーターになったり他の人に商品を紹介してくれたりする可能性は低いので、安定した収益確保にはつながらないでしょう。

一方、他人に薦めるとなると、単に「満足した」以上に、強烈にポジティブな印象をもっていると思われます。そのため、ネットプロモータースコア(NPS®)の方が、より収益性との相関関係が濃いと言われるのかもしれません。

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ネットプロモータースコア(NPS®)の計算方法

ネットプロモータースコア(NPS®)の計算方法は、以下のとおりです。

1.顧客へのアンケートを実施する

まずは、顧客へアンケートを実施します。例えば、「この商品を家族や友人にすすめたいと思いますか」などの設問を用意します。具体的な設問例については、後述の章にて解説します。

2.顧客のタイプを分類する

次に、集めた回答から、顧客を3つのタイプに分類します。分類の基準は、アンケートの点数「0点~10点」の11段階です。

推奨者 点数:9点~10点
自分も利用しており、他の人にもお薦めしたいと考えている
中立者 点数:7点~8点
推奨者と批判者、どちらにも属さない中間層
批判者 点数:0点~6点
自分が利用するかわからない、他の人にも薦めないと考える

3.得た点数からネットプロモータースコア(NPS®)の数値を算出する

最後に以下の計算式に則り、ネットプロモータースコア(NPS®)の数値を算出します。

(ネットプロモータースコア(NPS®))=(推奨者の割合)ー(批判者の割合)

image01_NPS数値の計算.jpg

【計算例】
以下のとおり、アンケート結果を得られたとします。

0点 1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 8点 9点 10点 合計
1人 3人 3人 2人 3人 5人 6人 10人 8人 4人 5人 50人

すると、批判者(0点〜6点)と推奨者(9点、10点)の数を集計すると、それぞれ以下のとおりになります。
(批判者(0点〜6点)数)=1+3+3+2+3+5+6=23
(推奨者(9点、10点)数)=4+5=9

∴(ネットプロモータースコア(NPS®))=(推奨者の割合)ー(批判者の割合)
=(9÷50×100)ー(23÷50×100)=18-46=-28

となり、ネットプロモータースコア(NPS®)は-28となります。

ネットプロモータースコア(NPS®)の数値の目安

まず、ネットプロモータースコア(NPS®)の数値のレンジは、-100%(全員が批判者)~100%(全員が推奨者)となります。数値が高ければ高いほど、顧客ロイヤリティが高い、という結果です。

数値の平均値については業界や国によって異なります。以下一例として、数値の目安を掲載しています。

部門 第1位企業 業界1位スコア 業界平均スコア
業界平均スコア SBI証券 NPS -8.1pt NPS -27.3pt
QRコード決済部門 PayPay NPS -24.5pt NPS -38.2pt
動画配信サービス部門 Netflix NPS -2.0pt NPS -22.7p
銀行部門 ソニー銀行 NPS -22.9pt NPS -44.1pt

【参考】NTTコムオンライン「NPS®業界別ランキング&アワード」をもとに筆者作成

ネットプロモータースコア(NPS®)のアンケートで盛り込みたい設問内容

ネットプロモータースコア(NPS®)のアンケートでは、適切な設問内容を盛り込めば、ビジネスに大いに活用できる知見が得られます。

ここでは、3つの設問内容について解説します。

商品をどこで認知したか?

商品をどこで認知したか明らかにできれば、広告戦略の立案に役立ちます。

テレビやSNS、クチコミ、新聞広告など、顧客はあらゆる媒体で商品を認知するものです。そのため、どの媒体からの認知が多いか明確にすれば、認知が多い媒体を中心に据えることで、効率よく広告を打てます。

反対に、広告コストを削減できるメリットが、広告を打ち続けるメリットを上回るのであれば、効果が薄い媒体からは縮小や撤退を検討してもよいかもしれません。

【設問例】

  • 弊スポーツ雑誌を、どこで知りましたか?
  • 弊社食品を知ったきっかけは、何ですか?

 

商品を購入しようと思った決め手は何か?

顧客が商品を購入しようと思った決め手を明らかにすることで、他社と比較した商品の強みが明確になります。なぜなら、顧客は物事を達成するために商品を購入するもので、アンケートから物事を「どう」達成したいか明らかにできるからです。

また、決め手になりうる要素の例は、以下のとおりです。

  • 商品のデザイン
  • 商品の見つけやすさ
  • クーポンの存在

販売促進においては、多くの顧客にとって購入の決め手となったポイントをプッシュすれば、販売促進が成功する確率が高まります。そのため、顧客が商品を購入しようと思った決め手を明らかにすることは、業績アップにもつながるのです。

【設問例】

  • 弊社保険サービスに加入した決め手を教えてください。
  • 弊社ミネラルウォーターサーバーに契約した理由は、何ですか?

 

要所要所においてどれほど満足しているか?

商品全体の推奨度だけでなく、要所要所での満足度を確認し、ネットプロモータースコア(NPS®)の結果と比較してみましょう。これにより、具体的に顧客はどこに満足しているか、もしくはどこが不満か明確にできます。

また、改善すべきポイントが、ネットプロモータースコア(NPS®)の結果だけよりも詳細にわかるので、効率よく商品や接客などの改善につなげられるでしょう。

満足度を確認すべきポイントの例は、以下のとおりです。

  • 商品の機能
  • HPでの説明
  • 接客
  • 返品のしやすさ
  • メルマガの内容

その際には、顧客のカスタマージャーニーに沿って、アンケートを取るポイントを設定すると、アンケートの回答を得やすい上に、実際の施策にも反映させやすくなります。

【設問例】

  • 弊出版社が発行しているメルマガの感想をお聞かせください
  • 当球場における接客にご不満な点はございますか?

 

ネットプロモータースコア(NPS®)の設問設計のポイント

ネットプロモータースコア(NPS®)の設問を適切に設計していないと、顧客が設問を誤解してしまうなどして正確な結果を得られず、その結果をビジネスシーンに活用できません。

以下のポイントに注意して、ビジネスシーンに活用できる正確なデータを得られるようにしましょう。

顧客が回答しやすい設問とする

アンケート内容は、答えやすいようにシンプルな内容とすることが大切です。設問作成の軸としては、「顧客が自社商品・サービスを家族や友人に薦めたいと思っているか」がわかる内容で設問を設定するとよいでしょう。

例えば、どの程度薦めたいと思うかを最初に問い、その理由について次に問うような流れとすることで、回答しやすいことに加え、点数の原因も把握でき、結果集計後の分析・戦略立案にも有効活用できるでしょう。

アンケート目的によって、回答者の選定を正しく行う

アンケート実施の対象とする顧客は、目的によって選定することが大切です。

例えばリピーター向け施策を講じたいのであれば、優良顧客に絞って実施する必要がありますし、全体の顧客ロイヤリティを高めたいのであれば、できるだけ多くの顧客に回答してもらうことが必要となります。

ただ、ターゲットを絞りすぎてサンプルが少なくなってしまうと、正しい結果が得られなくなってしまいます。できるだけ多くの顧客に回答してもらうことで、より精度の高い施策立案が実現するでしょう。

ネットプロモータースコア(NPS®)の結果はどのように活用する?

ネットプロモータースコア(NPS®)は、単に結果を得ただけでは意味がありません。ここでは、ネットプロモータースコア(NPS®)の結果を得た後に、どのようにビジネスに活用すればよいか解説します。

顧客に合わせたアプローチ方法の立案に有効

ネットプロモータースコア(NPS®)の結果は、自社が想定していた顧客像とリアルな顧客像に差がないか分析できます。そのため、批判者数を減少させるか、推奨者数を増加させるためのアプローチ方法を、顧客に合わせて立案したい場合に有効です。

また、ネットプロモータースコア(NPS®)は容易に計測・分析を実施できます。現在のアプローチ方法のどこが顧客に評価されているか、もしくはどこが不満に思われているか分析しやすいこともメリットです。

アンケート結果から、顧客ロイヤリティを押し上げている要因や、反対に悪影響を与えている要因を読み解きましょう。そして、アンケート結果から得られた分析内容を、実際の施策に反映させて顧客に還元する仕組みを作っておくと、より企業の成長に与える効果が上がります。

業界内における自社のポジションの明確化

ネットプロモータースコア(NPS®)の結果を用いると、自社の業界内における相対的なポジションが明確になります。

ネットプロモータースコア(NPS®)の結果を分析する際には、事前に業界1位や平均値を把握しておくと、より自社のポジションを比較しやすくなります。また、定期的にネットプロモータースコア(NPS®)の結果を取っていくと、経年での顧客の動向を追えるため、より効果的に施策の妥当性や効果を計測できるはずです。

ただ、国や地域、業界などを要因として、ネットプロモータースコア(NPS®)の結果に影響が出る可能性があることにも留意しておきましょう。例えば、日本人は欧米人と比較してネットプロモータースコア(NPS®)が低く出る傾向にあると言われているため、一概に比較することが難しい場合もあります。

引用:NPS®業界別ランキング&アワード

自社の強みや課題の抽出

ネットプロモータースコアの結果を活用すれば、自社の強みや課題の抽出を効果的に実施できます。その際には、定性分析と定量分析の両方を活用すると、より効果が上がります。

定量分析
  • 各要素(コストパフォーマンスや接客など)と、推奨度との相関関係を取る
  • 各要素と推奨度との散布図(下記参照)を作ると、相関関係がわかりやすくなる
  • 現状の顧客満足度が高い上に、ネットプロモータースコアとの相関も高い要素は、自社の強みなので、維持するよう心がける
  • 現状の顧客満足度が低いものの、ネットプロモータースコアとの相関は高い要素は、自社の弱みなので、重点的に改善すべきポイントになる
  • 定量分析だけでは、想定していない項目は計測できない
定性分析
  • フリーコメントも併せて用意しておき、推奨者と批判者とでコメントを分類する
  • フリーコメントに、顧客の本音が隠れていることもある
  • 定性分析だけでは、潜在的に顧客推奨度に影響を与えている要素が明確にならない

上の表でわかるように、定性分析と定量分析は相互補完の関係にあります。そのため、定性分析と定量分析両方の結果を分析することで、ネットプロモータースコア(NPS®)の結果から、より自社の強みや課題の抽出を効果的に実施できるのです。

image02_散布図イメージ.jpg

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経営判断に活用

ネットプロモータースコア(NPS®)は、経営判断に活用しやすい指標とされています。なぜなら、事業の成長とネットプロモータースコア(NPS®)の結果は相関性が高いと言われているからです。

例えば、以下に引用として紹介しているホワイトペーパーによると、航空業界の主要企業において、NPS®と5年間の売上高成長率では相関係数「0.89」と報告されています。

売上高を成長させることは、多くの企業において重要な経営判断ポイントです。そのため、NPS®のスコアを向上させる施策を講じることは、売上高の面では経営判断として正しいと考えられます。

以上より、ネットプロモータースコア(NPS®)の分析結果を活用し、今後の戦略を立案することは、有効な経営判断方法の1つと言えるのです。

引用:THE POWER BEHIND A SINGLE NUMBER

まとめ|ネットプロモータースコア(NPS®)の計測結果を活用して自社を安定的に成長させよう

ネットプロモータースコア(NPS®)は、顧客に対し「この商品は、家族や友人にどれだけ薦められるか」のアンケートに回答してもらうものです。アンケート結果から顧客ロイヤリティを計測できるため、安定して収益を確保するために業務改善するのに活用できます。

ネットプロモータースコア(NPS®)でアンケートを行う際には、認知した場所や購入した決め手などを設問に盛り込みましょう。また、ネットプロモータースコア(NPS®)の結果から、アプローチ方法の立案や自社のポジションの明確化を行うと、顧客との信頼関係が強固なものとなり、自社の経営に役立つでしょう。

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