フォーカスグループインタビューとは |手順・注意点などを解説

2022年11月25日

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フォーカスグループインタビュー(FGI)は、商品サービスの評価や、ユーザーの深層心理をつかむために実施される調査方法です。今回の記事では、フォーカスグループインタビューのメリット・デメリットや実施手順・対象者集めのポイント、注意点をまとめました。

フォーカスグループインタビューの概要

フォーカスグループインタビューとは

フォーカスグループインタビューとは、異なる属性の少人数グループを複数作成し、座談会形式でインタビューを実施する調査手法のことです。

参考記事:

【まとめて解説】グループインタビューとは?│特徴・流れ・留意点

フォーカスグループインタビューの目的

フォーカスグループインタビューは主に「商品・サービスの評価」「消費者のニーズ把握」「新商品コンセプトに対する想定ユーザーの評価」など、企業側が消費者の消費心理をつかむ目的で実施されます。

デプスインタビューとの違い

調査対象者が1名のインタビューのことを、「デプスインタビュー」と呼びます。
デプスインタビューは主に、消費者個人の意思決定の過程を理解する目的で実施されます。
「フォーカスグループインタビュー」は少人数のグループ(主に6~8名の小グループが多い)で実施するのに対し、「デプスインタビュー」は1対1のインタビュー形式で実施するのが特徴です。

フォーカスグループとは

フォーカスグループとは、目的を達成するために対象を抽出した集団のことを指します。
人口統計学的(性別・年代・世帯構成など)において、似ている属性の人を集める場合が多いです。
フォーカスグループには「探索型」「分析型」「体験型」の3種類があります。

探索型では、仮説や問題が不明の状態から、仮説や問題を探すために実施します。また、商品やサービスのコンセプトを新たに作るために用いられます。
分析型では、人の潜在意識にある動機や感情、意思決定の過程などの把握を行います。
体験型では、実際に商品やサービスを使用しているユーザーを集め、感想や改善点、ユーザー心理などを知るために実施します。

インタビューで知りたい内容や実施する目的に合わせて、フォーカスグループを作成します。

フォーカスグループインタビューを実施するメリット

フォーカスグループインタビューを実施するメリットを4つ紹介します。

商品・サービスの改善点が見つかる

フォーカスグループインタビューでは、消費者の生の声を聴きながらインタビューを実施することで、商品・サービスの改善点や消費者のニーズを発見できます。
開発担当者やマーケティング担当者など、企業の中にいる人だけでは得られない新しい視点を、商品やサービスに取り入れていくことが可能となります。

単独インタビューでは得られない情報が得られる

フォーカスグループインタビューは、複数人数で対話をしながらインタビューを進めていくため、1対1のインタビューでは得られない発想や情報を得ることができます。
グループ内の相互作用やグループダイナミクス(集団力動)を活かし、より幅広い意見やアイデアの収集が可能となります。また、課題解決のための新たな視点が発見されることもあるでしょう。
グループ内の対話を通して、他の人の意見を聞くことで、より新しいアイデアが出ることもあります。

短時間で実施できる

フォーカスグループインタビューでは、複数人(6~8名)に同時にインタビューができるため、短時間で多くの人から情報を集めることができます。
デプスインタビューは1対1で実施するため、多くの人から情報を得ようとすると、より多くの時間がかかってしまいます。

例:6名にインタビューを実施したいときの所要時間

  • フォーカスグループインタビューの場合:1グループ×1時間30分=1時間30分
  • デプスインタビューの場合:6人×1時間=6時間

異なる属性グループの比較ができる

フォーカスグループインタビューは、複数の異なる属性グループへインタビューを実施することで、属性の違いによる実態・意識・評価の違いの検討が可能です。
例えば、商品Aに対する男女の違い、20代と40代における世代間の違い、単身者と2人暮らしと子育て世帯における違いなどを評価することができます。
フォーカスグループインタビューの実施前に、目的を明確にしたうえで、フォーカスグループを戦略的に作成することで、より効果的に分析結果を活用することが可能になるでしょう。

フォーカスグループインタビューを実施するデメリット

フォーカスグループインタビューを実施するうえで生じるデメリットを4つ紹介します。

個人の深い心理を知ることが難しい

グループフォーカスインタビューでは、初対面の人がグループになり、グループ内で議論をするため、個人の深い心理を知ることは難しいでしょう。また、初対面で緊張して話しにくい、個人的な話はしたくない、という参加者もいます。
グループフォーカスインタビューでは、病気や容姿、苦しい体験、経済状況といった個人情報や、ネガティブな話題は難しいとされています。
初対面のグループで話すことを前提としたテーマ選びが必要になります。

グループによって、議論が盛り上がらないことも

フォーカスグループインタビューでは、初対面の人がグループを組み議論を実施するため、グループによっては議論が盛り上がらないこともあります。
また、周りの目を気にして発言できなかったり、攻撃的・否定的な態度を取られて場の雰囲気が悪くなると、議論が深まりません。
インタビュアーが話しやすい雰囲気を作っていくことが重要となります。

バイアスの発生

サンプルバイアスや、インタビュアーの与えるバイアスなど、様々なバイアスを考慮する必要があります。

例えば、サンプルバイアスでは、学生の人ばかり集まったり、高学歴の人ばかり集まる場合があります。平日昼間にインタビューを実施した場合、その時間帯に参加できる人(学生・主婦など)の偏りが生じ、平日昼間に働いている人の意見を聞くことは難しいでしょう。
このように、思いがけない参加者のサンプルバイアスがかかる可能性があります。
サンプルバイアスにより、インタビューで議論される内容も大きく異なると考えられます。

また、当日インタビューを実施するインタビュアーが与えるバイアスも発生します。
インタビュアーの質問や議論の仕方で、インタビュアーが考えている理想の結論へ(意識的・無意識的に関わらず)誘導してしまう可能性があります。
また、表情や相槌といった非言語的な情報も、インタビュアーがグループに対して影響を与え、インタビュアーが与えるバイアスとして働くことも考慮する必要があります。

日程調整が大変

複数人の参加者がいるため、1対1のインタビューと比較するとインタビューの実施日時の調整が大変です。
また、当日のキャンセル対応など、日程調整に必要な労力が多くなります。

フォーカスグループインタビューの手順

フォーカスグループインタビューは、「ヒアリング・契約」→「スクリーニング」→「リクルーティング」→「インタビュー」→「結果の検証」という過程で実施します。
今回はそれぞれの過程でどのようなことをするかについて、解説します。

目的や予算の検討

まず、フォーカスグループインタビューを実施する目的や知りたい内容、予算などを検討します。
インタビューは、社内リソースで実施する場合と、調査会社へ依頼する場合があります。調査会社へ依頼する場合は、調査会社を選び、契約します。

スクリーニング

フォーカスグループインタビュー実施の目的に合わせて、対象者サンプルを抽出します。
インタビューを実施したい属性の人を探す作業です。

詳しくはこちら:"スクリーニング調査とは?注意点・質問の作り方・質問事例なども紹介 "

リクルーティング

スクリーニング調査の結果をもとに、インタビューの対象者を集める作業です。
インタビューの日程調整やグループ決めなどを行います。

インタビュー

小グループに分かれて、インタビューを実施します。

環境

所要時間は1時間半~2時間で実施されることが多いです。
場所は静かな会議室が望ましいとされています。現在は、オンライン上で実施されるケースもあります。
また、映像記録や録音記録の実施設備が必要です。インタビューの様子を後から見返したり、分析するために記録を活用します。

参加者

参加者の例を下記の表にまとめました。

司会者(インタビュアー、モデレーター) 1名
サブインタビュアー 0~1名
記録担当者 1~2名
対象者(インタビュー参加者) 6~8名

司会者は、インタビュアーやモデレーターを兼ねている場合がほとんどであり、その場を取り仕切ります。より質のいいインタビューを実施するためには、司会者のファシリテートの力量が求められます。

サブインタビュアーは、インタビュアーの補助(タイムキープなど)を実施します。
また、司会者やサブインタビュアーは、対話の中で得られる言語的な情報だけでなく、対象者の表情や全体の様子などを観察し、非言語的な情報を読み取り、結果検証へ活かします。

記録担当者は、その場のインタビューの内容を記録します。映像や音声記録を残すために、ICレコーダーやビデオカメラを設置します。インタビュー後、ICレコーダーのデータをもとに文字起こしを行います。
オンラインでインタビューを実施する場合は、録画機能を活用して映像や音声記録を残します。

対象者(インタビュー参加者)は、フォーカスグループインタビューの場合、6~8名で1グループを組むことが一般的です。

また、インタビュー当日は会場の設営やインタビュー参加者の受付、案内などを参加スタッフで手分けして実施します。

結果の検証

インタビューを通して得られた結果を検証し、商品・サービスの評価や、消費者ニーズの把握などを行います。

属性の分類方法

よりよいグループフォーカスインタビューを実施するためには、対象者集めの時点で、属性を考慮し、グループ分けをすることが重要となります。

年齢・性別

年齢や世代、性別によってグループを分けます。
例:女性のグループ、男性のグループ、20代女性のグループ、50代男性のグループ、など

ライフステージ

参加者のライフステージによってグループを分けます。
例:独身、パートナーや配偶者の有無、子どもの有無など

商品・サービスの利用状況

調査対象の商品やサービスの利用状況によってグループを分けます。
例:商品未使用者、トライアルユーザー、ヘビーユーザー、リピーターなど

自社・他社商品の利用状況

自社商品や他社商品の利用状況によってグループを分けます。
例:自社商品Aの使用者、競合他社商品Bの使用者、自社商品Aの未使用者など

フォーカスグループインタビュー実施時の注意点

フォーカスグループインタビューを実施するときの注意点を3つまとめました。

枠組み

フォーカスグループインタビューを実施する枠組みとして、参加人数や時間、グループの組み方をまとめました。

参加人数、時間

参加人数は、6~8名がよいとされています。
参加人数が多すぎると、参加者1名当たりの話せる時間が減ってしまいます。
一方で、参加人数が少なすぎると、幅広い意見を集めるのが困難になったり、参加者それぞれの発言が重視されすぎてしまう可能性があります。

1回のインタビュー実施時間は、1時間30分から2時間が理想とされています。
集中力を維持するためにも、途中で休憩をはさむとよいでしょう。

インタビュー実施時間が2時間を超えると、参加者もインタビュアーも疲れてしまうため、集中力の持続が難しくなり、活発な議論ができなくなる場合があります。
また、インタビュー実施時間が短すぎると、必要な情報を収集する前にインタビューが終了してしまう可能性があります。

対象者の抽出・グループの組み方

インタビューの目的に合わせた対象者を選び、同じ属性の人を集めたグループを作成することが重要です。
特に、他の属性や異分子となる人を入れないことが、属性間の比較のためにも重要となります。

フォーカスグループインタビューでは、スクリーニングやリクルーティングで、調査の目的に合わない人を選んでしまったり、グループ作成時に、他の属性の人が混ざってしまう可能性があります。
対象者の抽出やグループ作成に失敗すると、属性の違いによりインタビュー内の対話が盛り上がらない・欲しい議論を引き出せないといったリスクがあります。

例:家事の実施時間や使っている家電についてインタビューを実施したいとき
グループ内の6人中5名が専業主婦で、1名が会社員だった場合、家事の実施時間や負担感、求めるクオリティなどが異なる可能性があり、議論が思うように進まない(もしくは1名の会社員が強い疎外感を感じ、議論へ参加しなくなる)場合があります。

上記のような事態を防ぐためにも、インタビューを通して知りたいことや目的を明確にし、どのような属性の人にインタビューを実施したいかを予め決めておくことが重要です。

話しやすい話題選び

フォーカスグループインタビューでは、パーソナルな話題やネガティブな話題は向きません。
すでに販売されている商品、全員が利用したことのあるサービスなど、メンバー間で共通の認識がある話題が適しています。

ファシリテーションの技術

司会者のファシリテーションの技術も重要となります。場合によっては、サブインタビュアーが雰囲気づくりをサポートしていくことも必要でしょう。

あたたかな雰囲気づくり

初対面の人が集まるので、緊張や不安を抱えている参加者が多いと考えられます。
活発な議論を促すためには、心理的に安全な場、参加者が自由に発言できる場を作ることが重要となります。

司会者は、緊張をほぐすためのアイスブレイクを入れたり、あまり発言をしていない人に意見を求めたりすることで、あたたかな雰囲気づくりをしていくことが求められます。

分析

結果検証を行うときに、考慮すべきポイントをまとめました。

パーソナリティの把握

参加者のパーソナリティを把握をすることで、より効果的な結果検証が行えます。
他者からの影響の受けやすさ、他者に対する敏感性、自己主張の程度、情緒安定性などをインタビュー中に観察し、分析に活かせるとよいでしょう。
1回のグループインタビュー中に参加者のパーソナリティのすべてを把握することは難しいですが、議論中の振舞い方などを観察し、「どの程度積極的に話しているか」「本音で議論しているか」などの視点から分析を行うことが重要となります。

集団力動・相互作用の把握

インタビュー中に、集団力動や相互作用が生じていることを念頭に置きながら、結果検証を実施しましょう。
グループフォーカスインタビューでは、グループでインタビューを実施しているため、他人の発言に引っ張られている可能性があります。また、特定の人の発言力が高くなかったか、話したいことがあったけど話せなかったことがある人がいないかなど、集団力動を査定していくことが重要です。

まとめ

今回は、フォーカスグループインタビューの概要やメリット・デメリット、手順、対象者集めのポイント、注意点などをまとめました。
フォーカスグループインタビューは、少人数グループの議論を通して、単独インタビューでは得られない自由な発想や広い意見を知りたいときに活用できる手法です。
ユーザーのニーズや商品の評価を調査するときは、目的を明確にし、ニーズに合わせた調査手法を選択することが重要となります。知りたい情報に合わせて、調査手法を選択しましょう。

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