ブランドエクイティとは?調査・測定方法や企業事例をわかりやすく解説

2021年12月14日

ブランドエクイティとは?調査・測定方法や企業事例をわかりやすく解説

ブランドエクイティとは目に見えないブランド価値を資産として捉える考え方のことです。
1980年代後半までは、よい商品を生み出してさえいればブランドは後からついてくるとの考え方が優勢でしたが、現在はブランドは意図的に育てる必要のある資産だと判明しています。

短絡的なマーケティング戦略から脱却し、顧客が商品を指名買いをしてくれる仕組みを構築するためには、ブランドエクイティを育てることが大切です。

​​本記事では、ブランドエクイティの概要と構成要素、成功事例を詳しく解説します。

ブランドエクイティとは?

ブランドエクイティ
目で見ることのできない価値を企業の資産として可視化する概念のこと。マーケティング戦略の上位観念。ブランドを短絡的な戦術ではなく、長期的な戦略と捉える代表的な考え方。

ブランドエクイティ(Brand Equity)の「エクイティ」は株主資本=資産を意味します。つまり直訳するとブランドが持つ資産という意味です。

ブランド・エクイティ

例えば、あなたが「マヨネーズ」と聞いたときに、あるひとつのメーカーのマヨネーズを想起したのであれば、その企業のブランドエクイティは高いといえます。

ブランド

ブランドは1980年代後半までは、「名前・ロゴ」と認識されており、短絡的な売上に直結する戦術と理解されていました。しかし、POSレジ導入後、リアルタイムでのデータ取得が可能となり、顧客の購買決定要因は「値下げ」であることが判明しました。

購買決定要因が「値下げ」である以上「名前・ロゴ」といった短絡的なブランド戦術よりも「いかに安く売るか」に主眼が置かれ、各企業は値下げ競争に踏み切りました。

このように企業の値下げによるシェア拡大競争が激化したことにより、企業は腰を据えた、長期的な新たな価値創出の戦略が必要になりました。

この際に台頭したのが、カルフォニア大学ハース経営大学院の名誉教授であるデービッド・アーカーが提唱した「ブランドをエクイティとして捉える戦略」でした。

ブランドエクイティにおける5つの構成要素

ブランドエクイティにおける5つの構成要素

ブランドエクイティを考える上で、アーカーが提唱した5つの構成要素の理解は欠かせません。

そこで以下5つのブランドエクイティの要素を詳しく解説します。

  • ブランド認知
  • ブランド連想
  • 知覚品質
  • ブランドロイヤリティ
  • その他ブランド資産

それぞれの要素を詳しく解説します。

ブランド認知

ブランド認知とは、ブランドがどれだけ顧客に認識されているかを示します。実務的には以下4つの指標を用いてブランド認知度が計測されます。

ブランド認知のフェーズ

◆ブランド認知のフェーズ

  • ブランド助成想起率:複数のブランドを挙げた上で自社ブランドを知っている
  • ブランド純粋想起率:カテゴリを提示した上で自社ブランドの名前が挙がる
  • ブランド第一想起率:カテゴリを提示した上で自社ブランドが1番に挙がる
  • ブランド支配想起率:カテゴリを提示した上で自社ブランドが1番に挙がり、それ以外のブランドは想起されない。

一般的に、ブランドエクイティのブランド認知のフェーズは上図のように推移するため、ブランド支配想起率が高いほどブランドエクイティは高いです。

先ほどのマヨネーズの例でいえば、他にマヨネーズメーカーが思いつかないほど一社目の印象が強いなら、ブランド認知は非常に高いといえます。

ブランド連想

ブランド連想とは、顧客がそのブランドに関して想像ができるすべてのものです。
ポジティブかつ多くの連想ができる状態をつくることは自社のブランド価値の向上に繋がります。

知覚品質

知覚品質とは、企業側で認知している事実ではなく、顧客が認識している知覚や品質を示しています。例えば、実際は痩せるという確証はないものの、「この商品を使うと痩せる」と顧客が思っている場合は知覚品質にあたります。

ブランドロイヤリティ

ブランドロイヤリティとは「そのブランドへの愛着度や信頼度」のことです。使い慣れたものには愛着が湧くため、すぐに切り替えるのが難しいです。

企業から見ると、ブランドロイヤリティを一度獲得するとスイッチングの可能性が低くなるため、安定した収益の確保に繋がります。そのため、ブランドロイヤリティはブランドエクイティにおいて重要な構成要素と位置づけられます。

その他ブランド資産

上述の4要素以外の無形資産についてはブランドエクイティを構成するその他ブランド資産となります。その他ブランド資産の例として以下が挙げられます。

  • 取引先との強固な関係
  • 特許
  • 商標

ブランドエクイティを育てるメリット

ブランドエクイティを育てるメリットは以下の4点です。

  • 価格プレミアムの向上
  • CliAの低減
  • 参入障壁の構築
  • 他社との差別化

価格プレミアムの向上

価格プレミアムとは、商品を購入する際に、他の商品よりも多少高くても購入してしまう差分の価格です。

例えば、指輪を購入する際には素材はほとんど同じであったとしても、企業のブランドを参照して指輪を選ぶ人が多いのではないでしょうか。

価格プレミアムが向上する事は、会社の売上・利益率に直接的に寄与します。

CPAの低減

CPA(Cost Per Acquisition)とは新規顧客獲得にかかる費用のことです。ブランドエクイティを向上させることで、顧客のロイヤリティが増し、指名買いの割合は増加します。

指名買いが増加すると、広告やプロモーションを打ち出さなくても顧客を継続的に獲得できるため、結果としてCPAは削減できます。

参入障壁の構築

非価格競争下において、他社の模倣を阻止できるのはブランドエクイティです。同様の機能を持った商品を開発されたとしても、既にブランドエクイティを獲得している場合は、他社への顧客流出を阻止できます。

参入障壁を築くできることができる意味でも、ブランドエクイティは有用です。

他社との差別化

技術と情報伝達のスピードが向上したことで、既にサービスの機能面での本質的な差別化は難しくなっています。こうした中、顧客心理を利用した「顧客のファン化」は他社との大きな差別化に繋がります。

ブランドエクイティを理解するためのフレームワーク

ブランドエクイティを理解するためのフレームワーク

ブランドエクイティを理解するためのフレームワークとして、ブランドエクイティピラミッドが活用されます。
ブランドエクイティピラミッドはダートマス大学のケラー教授が開発したモデルで感覚的にわかりやすく、実用性が高いのが特徴です。

ブランドエクイティを理解するためのフレームワーク2

図の下から上に進むほどブランドエクイティは向上すると言われており、図の左側が合理的判断に基づくもの、右側が感情的判断に基づくものとなっています。
ケラーのブランドエクイティピラミッドによればブランドエクイティは以下の要素で構成されます。

  • 認知・認識
  • 特徴理解
  • 理性評価
  • イメージ
  • 感性評価
  • 共鳴感情

認知・認識

ブランド認知・認識とはブランドへの認知度を示しています。アーカーモデルの「ブランド認知」がピラミッドの低層にあたります。

ブランドエクイティの土台になる部分のため、ブランドエクイティでまず注力すべきポイントが認知・認識です。

特徴理解

特徴理解とは、実利的価値の理解度合いのことです。例えば、「品質がよい」「コンパクト」などの理解がブランド構築に関わります。

理性評価

理性評価とは、自身の生活に基づいた理性的な評価のことです。特徴評価よりも、「自分事」としての捉えた評価に近くなります。
例えば「便利そう」「安全そう」などの、自身の生活に紐づく思いを伴った上で理性的な判断・評価を行うことを指します。

特徴理解と理性評価はアーカーモデルの「知覚品質」と似た概念と評されます。

イメージ

ブランドのイメージです。例えば「お洒落」「親しみやすい」などの感情的な判断はイメージに分類されます。

感性評価

感性評価は、イメージよりもより顧客の生活に基づいた印象のことです。例えば、「好感がもてる」などは感性評価に該当します。

イメージと感性評価は、アーカーモデルのブランド連想に該当します。

共鳴感情

共鳴価値はアーカーモデルのブランドロイヤリティと同義です。他の商品に代替できないような愛着が、共鳴感情に分類されます。

ブランドエクイティの向上のためには、共鳴感情を持つ顧客を増やすことが重要です。

ブランドエクイティの調査・測定方法

ブランドエクイティは無形の資産のため、目に見える数値に直すことは難しいと言われていますが、以下3つの方法を用いると計測が可能だと言われています。

  • NliSを活用しブランドの評価を可視化する
  • ブランドリプレイス費用から計測する
  • 企業の財務情報をもとにのれんで計測する

NPSを活用しブランドの評価を可視化する

NPSを活用しブランドの評価を可視化

NPSとは、顧客のロイヤリティを測る指標のことです。NPSは事業の成長性(CAGR)とも高い相関性があることから、欧米では1/3の企業が活用していると言われています。

NPSでは「あなたはこの商品を他の人に進められるか」を「0〜10」の11段階で顧客に判断してもらうことで、顧客ロイヤリティを計測します。

計算方法は回答者全体における推奨者の割合から、批判者の割合を引いたものというシンプルな計算になります。

※Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

◆NPSの計算式

NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合

ブランドリプレイス費用から計測する

ブランドリプレイス費用から計測

ブランドリプレイス費用は、知名度の全くない地域に出店した際、現在と同様の認知度を得るためにいくらかかるかを算出し、ブランドの価値を計測する方法です。

具体的には以下2つの費用を計算することになります。

  • ブランドアイデンティティ確立のための費用
  • 認知度向上のための費用

企業の財務情報をもとに計測する

ブランドエクイティは企業の財務情報をもとに計算することもできます。具体的には以下3つの方法が挙げられます。

コスト・アプローチ 貸借対照表の純資産に注目
インカム・アプローチ 企業が今後生み出す収益を元に査定する
マーケット・アプローチ 過去の実施されたM&Aの記録を元に査定する

財務情報を元にしてブランドエクイティを計測する際、「のれん」という財務科目にブランドエクイティは集約されますが、上記の計測方法のどれを利用するかは上場企業・非上場企業・業種によって変わります。

ブランドエクイティを計測する時というよりかは、M&Aの企業価値算定に上記の計算方法が使われています。

ブランドエクイティ構築に成功した企業事例

ブランドエクイティをうまく活用することで、企業の成長にも大きく寄与するのがブランドエクイティの特徴です。

実際にブランドエクイティを活用して成長した企業事例をご紹介します。

  • コーヒー店の事例
  • 掃除機メーカーの事例
  • 飲料メーカーの事例

それぞれの詳細を説明します。

コーヒー店の事例

顧客にとって快適な空間を作ることで顧客からのロイヤリティを獲得した企業例として、世界的に有名なコーヒー店Aが挙げられます。
コーヒー店Aは、どこでも顧客がリラックスできる空間を用意することで他コーヒー店との差別化を図ろうとしました。

店舗ごとの顧客対応のクオリティの差異をなくすために、かつて日本のコンビニが活用したフランチャイズ契約ではなく、自社店舗としてチェーン展開を続けました。

「どこの空間でも居心地よく過ごすことができる」という価値を顧客に提供したことで、ブランドエクイティの要素「知覚品質の向上」に努め、ブランドエクイティを高めた事例です。

掃除機メーカーの事例

ブランドエクイティが高い企業事例として、掃除機メーカーBの例が挙げられます。当時掃除機は紙のパック式のタイプが一般的でしたが、一度掃除機を使用してしまうと、紙パックの中身を捨てない限りは、吸引力が落ちてしまうという問題がありました。

掃除機メーカーBはこの「手間」に目をつけ、紙パックの入れ替えを必要としない「吸引力が変化しない掃除機」を発明しました。

当時初めての紙パックが必要ない掃除機が販売されたため、ブランド認知度は向上。「紙パックを必要としないデュアルサイクロン式の掃除機」の知名度はまたたく間に広まりました。

ブランド認知を向上させ、結果としてブランドエクティが向上した事例です。

飲料メーカーの事例

ある飲料メーカーCは、ビアテイストの清涼飲料水のリブランディングに成功しました。

飲料メーカーCは1970年代〜1980年代には、ビールとは少し変わったビアテイストの清涼飲料水としてその地位を確固たるものにしましたが、当時の若者からは「おじさんの飲み物」という悪いイメージが広がっていました。

そこでビアテイストの印象を「プリン体ゼロ」などの健康面へとシフト。リブランディングを実施したことで、知覚品質の塗り替えに成功し、ブランドエクイティを高めることに成功しました。

まとめ | 自社のブランドエクイティを見つめ直そう

本記事ではブランドエクイティ解説しました。

ブランドエクイティ向上のためには、まずブランド認知のフェーズを理解することが重要です。
その上で初めて、ブランドエクイティを改善するマーケティング戦略を考案できるようになります。

本記事を参考に、自社のブランドエクイティを一度考えてみるのはいかがでしょうか。

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