因子分析で事実から原因を探る|やり方や見方、注意点も併せて解説

2023年12月22日

因子分析で事実から原因を探る|やり方や見方、注意点も併せて解説

「アンケート調査で集まったデータを集約・分析したいが、選択肢が多すぎて手がつけられない」

「顧客の意見や要望が多く集まっている。根本的な解決のために、何から着手すべきか見きわめたい」

このようなお悩みを抱える方におすすめの分析手法が、因子分析です。

因子分析は、一言で言うと「原因」を探る分析です。複数の結果から共通点を見出すことができるため、マーケティングや心理学など、幅広い場面でユーザー理解のために活用されています。

本記事では、因子分析の概要ややり方、分析時のポイントを解説します。「聞いたことはあるが、具体的なやり方やデータの見方がわからない」「他の分析手法との違いを知りたい」という方は、ぜひご覧ください。

因子分析とは因子から変数を要約する手法

因子分析とは、観測変数が潜在変数からどのような影響を受けているのかを明確にすることで、複数の観測変数を少数に要約できる分析手法です。

一見すると難しく感じますが、簡単に言うと「いくつかの変量データから、背景にある共通点を探る分析」で、多変量解析の一種です。

原因・条件→調査結果、分かっていること、すでに起きていること

例えば、普段は元気な友人がため息をついていたり、何か考え込んでいたり、物陰で泣いていたりするのを見たとします。おそらく「普段とは様子が違う。きっと何か悩みがあるのだろう」と考える人が多いのではないでしょうか。

悩んでいる→ため息をつく、考え込んでいる、泣いている

このように、「目に見える現象は異なるが、根底には共通の原因があるのではないか?」と考えるのが因子分析です。

このとき、「ため息をつく」「考え込んでいる」「泣いている」など、実際に観測できる事象を「観測変数」と呼びます。また、「悩んでいるのではないか」といった、相関の強い観測データの原因と考えられる変数を「潜在変数」や「因子」と呼びます。

因子分析では、集約したデータから統計的根拠をもって因子を特定するため、当てずっぽうや思い込みに頼らず、どの程度の影響力があるのか予測できます。また、共通する因子ごとにデータを集約するため、データ分析の労力を減らすことができるのも一つの特徴です。

因子分析は知能の研究から始まった

因子分析は、ロンドン大学で哲学・心理学の教授を務めていたチャールズ・スピアマンによって創案されました。日々教壇に立つなかで「知能テストや試験の結果は、どのような要素によって決定づけられているのだろうか」と考えたことをきっかけに、生徒の能力を測定するために因子分析を開発したとされています。

例えば、国語・社会・数学・理科の4教科のテストを実施したとします。このとき、各教科の点数は目に見えるデータ、つまり「観測変数」となります。

単に個人の成績を知るだけなら分析は不要ですが、「ある教科の点数が高い生徒には、何か共通点があるのではないか」など全体の傾向を知りたい場合は、因子分析が役立ちます。

因子分析の考え方|原因・条件(潜在変数)→目に見えて観測できるデータ(観測変数)

各教科の点数を分析し、以下の2点がわかったとします。

  • 国語で高得点を取る生徒は、社会でも高得点を取る傾向にあるようだ
  • 数学で高得点を取る生徒は、理科でも高得点を取る傾向にあるようだ

このとき、「国語と社会、数学と理科のそれぞれに、共通して影響する能力がありそうだ」と考えることができます。仮に、「文系の能力」「理系の能力」としておきます。

因子分析の考え方|文系の能力→国語の点数、社会の点数|理系の能力→数学の点数、理科の点数

「文系の能力」に着目して相関を見たところ、国語と社会に強く影響しつつ、数学と理科にも若干の影響があるとわかりました。また、「理系の能力」に着目すると、こちらは数学と理科に強く影響しつつ、国語と社会にも少しの影響があるとわかりました。(※濃い矢印→影響力が大きい/薄い矢印→影響力が小さい)

とはいえ、点数に影響を及ぼす要因は上記の共通する能力だけとは限りません。科目固有の能力も影響すると考えられます。

因子分析の考え方|国語の点数←国語固有の能力、社会の点数←社会固有の能力、数学の点数←数学固有の能力、理科の点数←理科固有の能力

このように、各教科の得点を分析することで、目には見えない「文系・理系」能力という少ない変数と、各教科固有の能力から、点数の要因を説明できるようになります。

このとき、文系・理系の能力は「共通因子(f)」、各教科固有の能力は「独自因子(e)」と呼びます。

▼因子分析の考え方

(観測変数) = (矢印の太さ) × (共通因子) + (独自因子)

因子分析はマーケティング分野でも活用されている

もともと教育現場で生まれた因子分析ですが、今ではマーケティング分野でも活用されています。例えば、アンケート調査で集約した顧客の要望から、回答の裏にある潜在ニーズを見つけ出すことができます。

▼因子分析でできること

  • 多くの選択肢の原因や条件となる要素に気づくことができる
  • 性別・年代などのデモグラフィックデータではなく、意識や価値観に基づいたクラスター分けを行うことができる
  • 売れ行きの良い商品やサービスについて、必要とされる背景や理由を把握できる
  • 多くの顧客から、ブランドイメージを要約して知ることができる

因子分析は多変量解析の一種

多変量解析とは、多くの変数データからなにかを予測したりデータを要約したりする手法です。分析手法は複数あり、因子分析もこの一種です。多変量解析について詳しく知りたい方は、「多変量解析とは?ビジネスでも活用できる統計の分析手法を噛み砕いて徹底解説!」をご覧ください。

多変量解析の種類|分析の目的が予測:重回帰分析、コンジョイント分析、判別分析、ロジスティック回帰分析、数量化1類、数量化2類|分析の目的が要約:因子分析、主成分分析、クラスター分析、多次元尺度法、数量化3類、コレスポンデンス分析

本章では、多変量解析のなかでも因子分析と比較されることが多い、2つの分析手法との違いを解説します。

  • 主成分分析
  • 重回帰分析

因子分析と主成分分析の違い

因子分析と主成分分析の違いのイメージ図

主成分分析とは、多量の変数を少ない変数に置き換え要約することで、データを理解しやすくする分析手法です。一般的に、1~3つの変数(主成分)に置き換えます。

因子分析が観測変数の原因や条件となる潜在変数を探るものであるのに対して、主成分分析は観測変数を総合化するための解析手法です。「観測されたデータを要約する」といった点では因子分析と同じですが、ベクトルがまったく逆になっています。

主成分分析については、「主成分分析とは?因子分析との違いや事例を初心者にも分かりやすく解説」で詳しく解説しています。

因子分析と重回帰分析の違い

因子分析と重回帰分析の違いのイメージ図

結果(目的変数)を予測するときに、2つ以上の変数(説明変数)との相関関係を数式化して示す統計手法が、重回帰分析です。目的変数と説明変数を用いて計算します。

因子分析は目に見えない原因を予測するために実施され、重回帰分析の説明変数に使える変数を探す場面で使われることもあります。重回帰分析は、既存のデータを要約するためではなく、未知のデータを予測するために行います。

重回帰分析については、「重回帰分析とは?ビジネスでの活用シーンや方法・注意点を解説」をご覧ください。

因子分析のやり方

実際に因子分析を行うやり方を解説します。

因子分析の計算は複雑なため、Excel単体で行うことは困難です。大量のデータを分析する際はExcel統計などのアドインソフトや、「SPSS」「SAS」「R」などの統計ソフトを使うと効率よく計算できます。

共通因子の数を決める

まずは、分析の前段で共通因子の数を決定します。

決め方は複数あり、分析者自らが仮説を持って設定する方法や、固有値(変数の情報量の大きさで、固有値が大きいほど重要な因子)が1以上の数を因子数とする方法などがあります。分析目的に応じ、最適な方法を選択します。

因子負荷量を決める

共通因子の数が決まったら、因子負荷量を求めます。因子負荷量とは、共通因子が観測変数に及ぼす影響力の強さを可視化したものです。

因子負荷量を求める考え方や計算方法は複数あり、代表的なのは主因子法や最尤法(さいゆうほう)です。

軸を回転させる

次に、軸を回転させます。これは、共通因子の特徴をより明確にし、意味を解釈するために行うものです。代表的な回転の種類は、以下2種類です。

回転の種類 有名な例 特性
直交回転 バリマックス法 回転後も因子同士が無相関で直行した状態を維持する
斜交回転 プロマックス法 因子間の相関を許容する

直交回転と斜交回転のイメージ図

回転によって解釈しやすくなったところで、共通因子名を決めます。因子名は命名者の主観で決めて構いません。

因子得点を算出する

最後に、各アンケートの回答者や回答者のクラスタ(階層・グループ)の特徴を分析するための因子得点を算出します。

因子得点は、各個体における共通因子の値です。因子得点の解法は複数ありますが、有名なものとして回帰法があります。

分析結果の見方

因子分析で正しく結果を読み取るには、いくつかのデータに注目することがポイントです。本章では、因子分析を行い以下の表がアウトプットされたとして、分析結果をどう見ればよいか解説します。

▼因子分析の結果例(※ダミーデータ)

因子分析の結果例

1.因子の数や種類を見る

まず見るべきポイントは、因子の数と種類です。今回で言うと「因子1~3」の箇所に該当します。

分析を通じて、因子が3つあること、それぞれ「人間関係」「自己成長」「ワークライフバランス」に関する因子であることがわかります。

因子名

ちなみに、「人間関係」「自己成長」などとネーミングしているのは分析者自身です。ソフトが自動的に命名しているわけではありません。

2.各項目が与える影響を見る

次に、各項目が与える影響を見ます。

【因子負荷量】

因子負荷量

上記エリアは、因子負荷量を表しています。因子負荷量とは、共通因子が観測変数に及ぼす影響力の強さを表す数値です。-1以上1以下の値をとり、絶対値が大きいほど、強い相関があることを示します。

【寄与率】

寄与率

寄与率は、それぞれの因子がどのくらい質問項目を説明できているかということを表します。今回の分析では、因子1が23%、因子2が15%、因子3が14%とわかりました。

これらの寄与率をすべて合わせると、累計した因子で、もともとのデータの情報量をどの程度説明できているかがわかります。今回は、「3因子で9項目の情報の52%が説明できた」といえます。

【共通性】

共通性

共通性は、観測変数が共通因子によって説明される程度を表します。共通性が1に近いほど共通因子の割合が高く、独自因子の割合が低いといえます。

【因子得点】

因子得点とは、回答者ごとに、それぞれの共通因子をどれくらい持っているかを示すものです。各回答者の意識や価値観を推測できるため、回答者やクラスターの特徴を分析したい場合に算出します。

今回では、以下の3グループに分類できました。

  • 人間関係とワークライフバランスを重視するグループ
  • 自己成長を重視するグループ
  • ワークライフバランスを重視するグループ

因子得点

【参考|結果からさらに分析する】

因子分析の結果を踏まえて、さらにクラスター分析などを行うことも可能です。

因子得点_2

どのぐらいの数値以上を色塗りでハイライトするかは、とくに決まった数値はなく、分析者により決められます。クラスター分析については、「クラスター分析とは?その手法と応用例を図解!」をご覧ください。

因子分析の注意点

最後に、因子分析で正しくデータ分析し、分析結果を活用するために覚えておくべき注意点を2つ解説します。

因子数・因子名・回転方法は分析者が決める

因子分析では、因子の数と因子軸の回転を、分析前に立てた仮説に基づいて分析者が決定します。また、因子名も分析者の主観で名付けます。

解釈のしやすさによって因子数や回転方法を変えますが、そもそも解釈のしやすさは人それぞれ違うため、誰が行っても同じ方法になるとは限らない点に注意が必要です。

分析できるデータには条件がある

因子分析に用いるデータは、「数量データである」「変数間に相関関係がある」という条件があります。そのため、どのようなデータでも使える分析手法ではないといえます。

また、データのボリュームも以下2点を満たすことが望ましいとされています。

  • 回答者数が、観測変数の5倍~10倍である
  • 1つの共通因子を説明するのに、最低3~4つの質問項目が設定されている

まとめ|因子分析でデータ同士の関係性を分析

因子分析は、複数の変量データから、背景にある共通点を探る分析です。

分析者によって異なる見方になることや、扱うデータに条件があるなどいくつかの注意点はありますが、分析で得た結果はユーザーの潜在ニーズを見出すマーケティング戦略に活用することもできます。

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よくある質問

Q1.因子分析のやり方は?

因子分析は、以下の順に行います。

  • 共通因子の数を決める
  • 因子負荷量を決める
  • 軸を回転させる
  • 因子得点を算出する

詳しくは、「因子分析のやり方」の章をご覧ください。

Q2.因子分析結果はどう見ればよい?

因子分析の結果は、以下の点に着目してみることがおすすめです。

  • 因子数
  • 因子名
  • 因子負荷量
  • 寄与率
  • 共通性
  • 因子得点

詳しくは、「分析結果の見方」の節をご覧ください。

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