5F分析とは?5つの要因の意味や分析する際の注意点、事例を解説

2022年07月15日

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5F分析とは、外部環境を5つの競争要因に分けて分析する手法で、自社にとっての脅威やチャンスを把握するときに役立ちます。

業界構造理解や自社の優位性把握、競合分析ができるため、市場参入や商品開発などマーケティング戦略に活用されています。

この記事では、5F分析の意味や目的、活用シーン、分析時の注意点を解説します。

5F分析とは?

5F分析とは、自社を取り巻く環境要因を、5つの要素に分けて分析する手法です。

5F分析は、環境要因を以下の5つの要素に分類します。

◆5F分析の要素

  • 競合他社の脅威
  • 代替品の脅威
  • 新規参入者の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力

自社を取り巻く環境要因を分析することで、市場の収益構造や競合優位性、自社の収益性を把握できます。

例えば、5F分析の結果から他社が市場に新規参入しやすく、自社の代替商品が多数あると把握できた場合は、将来的に競争率が上がり、収益性が下がる可能性があると予測できます。

そのため、5F分析は撤退の検討を行いたい場合にも有効です。

5F分析を実施し業界の収益構造や競合の優位性が把握できれば、自社のマーケティング戦略に活用できます。

5F分析の5つの要因

【5F分析】1_5F分析の5つの要因.png

5F分析では、自社の外部環境を以下の5つの要因に分けて分析します。

  • 競合他社の脅威
  • 代替品の脅威
  • 新規参入者の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力

5つの要因がお互い影響しあうことで自社の収益が大きく変わるため、自社の将来性を予測する際に5F分析が役立ちます。

5F分析を行うには、まず分析する競合他社の範囲を決めて情報収集します。集めた情報を客観的に5つの要因に分けていきます。

それでは5F分析の5つの要因を1つずつ詳しく解説していきましょう。

競合他社の脅威

競合他社の脅威とは、競合他社が自社の売上に影響を与えることに対する脅威や、業界内での競争のことを意味します。

競合他社との競争が激しい場合、顧客が他社に流出することによって収益性が低下する恐れがあります。

例えば美容院を展開していて、5F分析から競合他社の脅威が大きいことがわかった場合は、英語が堪能なスタッフを集め外国人向けに特化したり、保育士を常駐して託児サービスを提供してファミリー層を開拓したりするなどで差別化を図ることも可能です。

競合他社の脅威については、以下のポイントを自社と競合他社で比較しながら市場の将来性や成長率などを分析していきます。
特に、商品の独自性やブランド性から自社の優位性を見つけ出すとよいでしょう。

◆競合他社の脅威を分析するポイント例

  • 市場のシェア率
  • 商品の独自性
  • ブランド性
  • 資金力
  • 各社の知名度
  • 競合他社の数

ただし、自社の市場シェアが高い場合は、競合他社からの影響は少なくすみます。

代替品の脅威

代替品の脅威とは、自社商品やサービスのニーズを満たす、競合他社の代替商品が現れることの脅威のことを指します。
代替品が現れると、市場での自社の影響力が低下する恐れがあります。

代替品の脅威の例は、以下の通りです。

◆代替品の脅威の例

  • 紙の本に対する電子書籍
  • テレビゲームに対するスマートフォンアプリ
  • ファックスに対するメール

代替品の脅威は、上記の例のように技術の発展などによって別業界からもたらされることが多くあります。

代替品の脅威に対抗する施策としては、代替品にはない機能やデザイン性などで商品の価値を高めたり、商品やサービスの乗り換えるスイッチングコストの分析を行ったりして競合他社との差別化の実施を検討しましょう。

新規参入者の脅威

新規参入者の脅威とは、新たに業界に参入する競合他社による脅威のことです。
参入障壁が低い業界の場合は、競合他社が参入しやすく業界での競争が激しくなり、自社の利益が少なくなってしまう可能性があります。

例えば比較的少ない開業資金で始めやすい飲食業界は、新規参入者が多い業界といえます。

一方資格や専門的な技術などが必要な医療機器業界は、新規参入者が少ない業界といえるでしょう。

新規参入されやすい業界では、以下のような対策を検討するとよいでしょう。

◆新規参入者の脅威への対策例

  • 価格設定の見直し
  • 特許取得などによる市場シェアの向上
  • 法律で規制がある分野への参入
  • 異業種とのタッグ

参入障壁が低いと競合他社が増えるため、収益性の確保が難しくなります。

参入障壁が高い業界への参入や特許の取得など新規参入者の脅威を分析し対策を行うことで、安定した利益を確保できるように目指しましょう。

買い手の交渉力

買い手の交渉力とは、自社商品やサービスを購入する顧客などの買い手と自社の間における力関係のことを指します。

競合他社との競争が激しく買い手が商品やサービスを選ぶ選択肢が多い場合は、値引き交渉やサービスへの要求が発生しやすくなり、買い手の交渉力が強くなります。買い手の交渉力が強いほど、利益が減少する恐れがあります。

自社商品やサービス、市場について以下にあげている点の見直しや分析を行い、買い手の交渉力への対策をしましょう。

◆買い手の交渉力への対策例

  • スイッチングコストの分析
  • 価格設定の検討
  • 商品やサービスにかかるコストの見直し

また自社が独占している商品を取り扱っている場合は、買い手の交渉力の影響を受けにくいため、安定した利益を期待できます。

売り手の交渉力

売り手の交渉力とは、自社と仕入れ先の間における力関係を示しています。材料などの仕入れ先である売り手の交渉力が強くなると、仕入れコストが高くなり収益が下がってしまう恐れがあります。

「仕入れ先を切り替えるコストが高い」「供給元の数が限られている」という場合は売り手の交渉力が強いため、値下げが難しく仕入れコストが上昇します。
特定の仕入れ先に依存している場合、別の売り手を選ぶことが困難です。

売り手の交渉力が強い場合は、以下の対策を検討します。

◆売り手の交渉力への対策例

  • 複数の仕入れ先確保
  • 仕入れ先変更の検討
  • 自社内での製造・開発

仕入れコストが上昇した場合には、利益確保のため販売価格を値上げするケースもありますが、既存顧客を手放す原因になりかねないため、容易に値上げを行わない方がよいでしょう。

売り手の交渉力の影響を軽減させるには、複数の仕入れ先を確保したり、自社内で製造や開発したりすることが考えられます。

5F分析の活用シーン

5F分析が活用されるシーンを3つ紹介します。

外部環境を俯瞰して分析

5F分析を用いると、自社を取り巻く外部環境を俯瞰して分析できます。
外部環境を分析することで、自社に影響を及ぼす可能性がある脅威や自社の強み、競合他社の状況を把握できるため、マーケティング戦略に役立てることが可能です。

また5F分析を実施する際は、複数の方法と併用することでより客観的に自社を分析できます。

例えば、環境要因を強み・弱み・機会・脅威の4視点から分析する「SWOT分析」を併用することで、マーケティング戦略の精度が向上できます。

他にも、PEST分析や3C分析などの分析手法を用いて環境要因を分析することも可能です。

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SWOT分析とは?内部環境・外部環境の4要素や分析方法を解説

市場参入の成功率や商品開発の収益性を予測

市場や競合の収益構造を分析することで、市場参入の成功率や新商品の収益性を予測できます。

また、新たな市場に参入した際の成功率や収益性を予測できれば、新規参入や、新商品開発を行うべきかを判断する材料となります。

【5F分析】2_5F分析の縦軸.png

例えば、5F分析の縦軸の「新規参入者の脅威」「競合他社の脅威」「代替品の脅威」の3つに注目して分析すると、市場における自社の利益を把握することが可能です。

新規参入を検討している市場を分析し参入障壁が低いと判断できた場合は、競合他社が多く激しい競争が発生しやすいため、大きな利益を生み出しにくいと考えられます。

競合他社を上回るためには、強みを活かして商品やサービスを差別化したり、競合よりも低い価格設定を検討したりすることが必要です。

自社の優位性を把握し戦略を立案する

5F分析を行うと自社にとって利益をあげやすいポジションが把握できるため、自社の優位性を活かしたマーケティング戦略を立案できます。

5F分析で自社の優位性を把握したい場合は、横軸の「売り手の交渉力」「競合他社の脅威」「買い手の交渉力」3つの要因を深掘りして分析するとよいでしょう。

【5F分析】3_5F分析の横軸.png

横軸に注視してみると、売り手と買い手との力関係が検証できるので、自社に影響を与える脅威を明らかにできます。

例えば、競合他社や類似製品が多い場合は、買い手の交渉力が高まり価格競争に陥って収益性低下を引き起こす可能性が高くなります。

また、製品の製造に必要な原料の売り手が少ない場合は、売り手の交渉力が高まるため、原料の値下げ交渉が困難になり、収益性が下がる恐れがあります。

売り手と買い手との力関係や競合他社の状況を分析していくと、市場での自社の立ち位置がわかり、優位性も見えてきます。

売り手と買い手との力関係を検証し、自社に影響を与える脅威を明らかにしてマーケティング施策の策定に活用しましょう。

5F分析の実践事例

5F分析で航空業を分析した実践事例を解説します。

【事例】航空業界

航空業界を取り巻く環境要因を5F分析で分けると以下のように分類できます。

業界内の競合 低価格でサービスを提供するLCCの参入により、価格競争の激化。
代替品の脅威 出張する機会が減少し、代替として「オンライン会議ツール」が台頭。
新規参入者の脅威 国内市場はLCCの大手の傘下入りや撤退が相次ぎ、当面新規参入は少ないとみられる。
買い手の交渉力 より安い航空券を求めてLCCを選ぶ可能性が高い。
国内の移動手段として新幹線も選択肢にあげられる。
売り手の交渉力 航空機材は海外メーカーに依存しているため、売り手の交渉力が強いとみられる。
燃料が高騰したとしても、運行するためには仕入れが必要となる。

航空業界は、技術力や資金が必要となるため参入障壁が高い業界です。

しかし低価格を売りにしたLCCの参入や、オンライン会議ツールの台頭による業界内の競合や代替品による脅威の影響が大きくなったことで、大手航空会社にとっては以前よりも市場シェアを保つのが難しくなってきています。

また、航空機材の海外メーカーへの依存や燃料費の高騰からコスト面が増大してしまう恐れもあります。

改善策としては、鉄道やバスなどとのコラボレーションを進めたり、新たな旅行方法を提案したりすることで需要を拡大させるプロモーションの実施などが考えられるでしょう。

コスト面に関しては、燃料を確保するルートを増やし、燃料高騰を抑制して問題を打開する方法も検討できます。

5F分析の注意点

5F分析を行う際の注意点を紹介します。

  • 分析時に主観を取り入れない
  • 分析する範囲を適切に設定する
  • 定期的に5F分析を実施する

分析時に主観を取り入れない

5F分析は、主観を取り入れず客観的に行いましょう。

特に自社の立ち位置や将来性などは希望的観測が入りやすいため、事実との間にズレが生じていないか注意が必要です。

例えば、業界全体の成長率予測する場合は、20%の成長率が見込まれるという結果に対して「20%が高いか低いか」という判断は人によって異なります。

分析結果を主観で解釈してしまうと、マーケティング戦略や経営戦略などにもブレが生じる恐れがあります。

客観的に分析するには、複数人で分析したり、裏付けできるデータを用意したりするとよいでしょう。

分析する範囲を適切に設定する

5F分析を行うときには、分析する範囲を適切に設定しましょう。

例えば、ソフトウェア販売会社が分析を行う際には、以下の分析範囲が考えられます。

  • 分析対象範囲:ソフトウェア販売会社のみか、IT業界全体か
  • 期間:半年スパンか、1年スパンか

特に「代替品の脅威」や「新規参入者の脅威」は、設定する範囲によって分析結果が変わる可能性が高いため、5F分析を実施する目的にあわせて他業界や他業種を含めて分析するのか検討しましょう。

定期的に5F分析を実施する

市場は常に変化するため、5F分析をもとに策定した施策がいつまでも有効とは限りません。

定期的に市場の仮説検証を実施して改善を繰り返していくことで、市場の動向に合った施策を行う必要があります。

他業界からの新規参入や競合他社の動向、買い手の消費行動の変化など自社を取り巻く環境要因は移り変わりやすいため、5F分析を定期的に実施してプロモーション戦略などを見直しましょう。

まとめ

5F分析とは、外部環境を5つの競争要因に分けて分析する手法です。

外部環境を5つの競争要因に分けて分析することで、市場の収益構造や競合優位性、自社の収益性を把握できるため、自社にとっての脅威やチャンスが把握できます。

5F分析を行う際には、適切な分析範囲を設定し情報収集して客観的に分析していくことが必要です。

また、SWOT分析など他の環境分析の手法を併用し、市場で仮説検証を繰り返していくことで、5F分析の結果をより活用できるでしょう。

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