ソーシャルメディアの普及により、風評被害が発生しやすくなっている

インターネットが普及した今日の社会では、情報を一方的に受け取るだけだった20世紀のマスメディア全盛時代とは異なり、消費者はソーシャルメディアを通じて企業や製品・サービスについて自由に発言できるようになりました。

その一方で、誤った情報や信頼性の低い噂レベルの話でもクチコミでインターネット上に拡散してしまうなど、以前に比べて企業や製品・サービスに関する風評被害が起こりやすくなっていると言えます。

こうしたソーシャルメディア上の風評被害の特徴は以下です。

1.伝播が早く広い
2.簡単に収まらない
3.いつまでも消えない(ネット上に痕跡が残り続ける)
4.匿名のためネットユーザーが無責任に語る

20世紀の企業はマスメディアを通じた情報発信によって風評をある程度コントロールすることができました。しかし、ソーシャルメディア時代においては、多くの人がリンクするブログ、Facebook、Twitterなどに広まってしまった風評は容易に収まらないので、企業は日頃から予防策を講じておくことが重要だと言えます。




ソーシャルメディア風評対策の極意は、早く気付いて誠実に対処すること

次に、こうしたソーシャルメディアで発生した風評被害に対して国内外の企業がどのように対処したかという事例を4点紹介します。

事例1. 早期対応、誠実な姿勢が高評価 - UCC上島珈琲 -
2010年2月、UCC上島珈琲は、コーヒーにちなんだエッセイを募集するキャンペーン告知の一環として、Twitterで投稿者が打ち込んだ「コーヒー」などのワードに反応して自動的にリプライするプログラムを作成。

これに対してUCCを偽装したスパムではないかという騒ぎが起きたが、Twitterをウォッチしている社内のネット関連事業部がこの混乱に気付き、開始後約1時間半でプログラムを停止。すぐに社長に情報が上げられ、問題発覚後4時間以内に公式謝罪文を発表した。

この誠実かつ素早い対応にネット上の批判は評価に変わり、フォロワーからは暖かいコメントが寄せられた。


事例2. 人力による情報検索で、真摯な顧客対応 - ネイバージャパン -
韓国最大のインターネットサービス会社NHNの出資により、日韓でネット検索サービスなどを運営するネイバージャパン。

2001年に日本国内でサービスを開始したが2005年に撤退。その失敗の教訓を生かし、現在はCGM(消費者生成メディア)を全面に出した戦略でシェアを拡大している。

同社はユーザーコミュニケーション担当の社員が、「NAVER」「ネイバー」といったキーワードでブログやmixiを常に検索し、ネガティブな意見や改善要望にはその日のうちに直接コメントを返し、時間がかかる場合には状況を報告。このヒューマンな対応がソーシャルメディア上で大きく取り上げられ注目されている。


事例3. 効率一辺倒の経営から脱却し、製品改善コミュニティの成功へ - DELL -
米国の著名なジャーナリストが、米DELL社のPCトラブルに対するカスタマーサポートへの批判をブログ上で書きつづった。その内容をさまざまなサイトやブログがリンク。

それに対して米DELL社側は何ら対応を取らなかったために、検索エンジンの上位に、米DELL社に対するネガティブなコメントが表示され、一部では不買運動にも発展した。

ただ、この事件は米DELL社が効率一辺倒の経営から脱却するターニングポイントとなり、同社が運営する顧客参加の製品改善コミュニティ「IDEASTORM」は、現在、協働型ソーシャルメディアの成功例として語られるようになっている。


事例4. ユーザーの意見を汲み取り、ロゴマーク変更の中止を決断 - GAP -
2010年10月4日、米カジュアル衣料大手GAPはロゴマークの変更を発表。これは事前にマーケティングリサーチなどユーザーからの意見を吸い上げることなく、トップダウンでの実施だったため、FacebookやTwitterで批判的な意見が巻き起こった。

その後、同社は10月6日にユーザーからデザインを募集するクラウドソーシングによって新ロゴを決定すると発表したが、この対応も不評で、結局、10月12日には旧ロゴに戻すことにした。
この決定はユーザーに好意的に受け入れられたが、同社のロゴマーク変更に伴うコストはムダなものとなってしまった。

これらの事例からわかるのは、風評被害対策の重要点は、「(1)素早く気付く」「(2)迅速・誠実に対応する」ことです。なぜなら、問題が小さいうちは必要となる社内リソースも少なくて済みますが、一旦広まり始めると急速に手に負えなくなるばかりか、広がった風評に対して場当たり的な対応を繰り返しているうちにますます状況が悪化してしまうからです。

このポイントである「(1)素早く気付く」「(2)迅速・誠実に対応する」ために企業として考えておきたいことをまとめてみました。




対策1:通常から2種類のモニタリングを同時並行で実行

風評を早期発見するためには通常から営業部門のマーケティング関連部署や経理・財務・広報・IR部署などを担当部門としたモニタリングが欠かせません。このモニタリングには2種類があり、自社製品・サービスのコアなファンのブログや情報交換が活発に行われる掲示板といったロイヤルユーザーサイトの毎日のチェック。そして、ネット全体を対象に自社製品・サービスや自社名・ブランドに関連するクチコミ数の週一のチェックを同時並行で行っていくことがポイントだと言えるでしょう。
これにより、特にクチコミが発生しやすく風評に敏感だと思われるロイヤルユーザー層の反応を、リアルタイムで確実に押さえるとともに、ネット全体で徐々に高まっていくブランドイメージの棄損や製品評価の低落も見落とさずにキャッチできます。

図1:通常体制

図1:通常体制


図2:通常時のモニタリングの実施例

図2:通常時のモニタリングの実施例




対策2:緊急体制に移行できるように日頃から準備しておく

風評発覚後に「迅速・誠実に対応する」ためには、通常のモニタリング体制に加えて、トップ直属の各部門を横断した社内組織(風評対策委員会)のもとで全社統一的に対処できるよう、日頃から準備しておくことが重要だと言えます。なぜなら、早急な対応が迫られる風評被害対策では、各部門がバラバラに対応することでかえって事態を悪化させてしまうこともあるからです。

その点、こうした風評対策専門の中核組織が社内アラートを出して社内に注意を喚起するとともに、現状把握・対応・経営層とのやりとりを実施することで、対外的にも迅速かつ誠実な対応を進めることが可能になります。以下に、こうした緊急体制下で、各部門が取るべき風評対策について紹介します。

図3:緊急体制

図3:緊急体制


【システム部門】
逆SEO対策(検索結果からの排除)によって二次被害拡大を防止。


【法務部門】
書き込みの削除要請(ブログなどで連絡先がわかる場合は書き込み者本人、匿名の場合は掲示板管理人)後、削除が行われない場合はプロバイダ責任制限法※に基づく法的措置の要請(削除&情報開示)を行う。
※参考リンク:プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律/平成14年5月施行)(警視庁サイトより)


【モニタリング担当部署】
転載状況を適宜確認して現状を把握する。

【経理財務広報IR部門】
ネット・マスメディアに対して、トップを通じた正確な情報を、ワンボイスで発信する。

【営業部門】
風評被害者、問い合わせ顧客、取引先等への対応を行う。




次回は、本レポートの総括およびソーシャルメディア調査を支える技術を紹介したいと思います。