アスキングからリスニングへ。消費者の生の声を聞くことができるソーシャルメディア調査

前回のレポートでは「ソーシャルメディア調査」を使って「プロモーション」効果を測定する方法について述べましたが、今回は、ソーシャルメディア調査を活用した商品開発について解説したいと思います。

商品開発に取り組むうえでは、「コンシューマー・インサイト(消費者の潜在的な心理や欲求)」の抽出が重要とされます。ところが、従来のマーケティングリサーチの手法であるアンケートやインタビュー(アスキング)は、リサーチャーが想定する範囲(質問の中)を超えて、調査の対象者から回答を得ることは難しい状況でした。

それに対して、製品・サービスについて消費者が自由に意見を述べているソーシャルメディアをリスニング(傾聴・観察)すれば、従来のアンケートやインタビューでは気がつかなかった新しい発見があり、それを商品開発のインサイト抽出に役立てることも可能ではないかと考えています。

図1:アスキングとリスニングの違い

図1:アスキングとリスニングの違い





ソーシャルメディア調査はこれまで見過ごしていたインサイト発見に役立つ

非常に簡単な例を挙げて解説してみましょう。例えば、自動車に関するアンケート調査を実施する際に、リサーチャーが今までの経験や知見を基に、以下のように、1~5までの選択を設けたと仮定します。

図2:従来調査におけるアンケート設計

図2:従来調査におけるアンケート設計


そうした中で、ソーシャルメディアで述べられた消費者のコメント収集(リスニング)を通じて「二酸化炭素をあまり出さない、地球にやさしい車がほしい」という意味合いのブログ記事を発見したとします。

そのことにより、「環境に対する配慮」も自動車の購買要因として重要なポイントの一つになるのではという気づきが得られ、この項目を選択肢に追加して調査を行うことで、より幅広いニーズの検証を行うことができます。

図3:ソーシャルメディアリスニングを利用したアンケート設計

図3:ソーシャルメディアリスニングを利用したアンケート設計




ソーシャルメディアからインサイトのヒントを得るためのデータの見方について

こうしたソーシャルメディアからインサイトのヒントを得るためのデータ抽出方法を紹介します。

(1) 量・質の検証

最初に行うのが、テーマに対する共起語の量と質の検証です。ソーシャルメディアの口コミ情報には多数派意見と少数派意見があると思いますが、多数派意見というのは、マーケットの現状を表しており、その中のポジティブ意見は、その製品やサービスが消費者から評価を得られている理由であり、ネガティブ意見はその製品やサービスに対する改善点や要望だと考えられます。

その一方、少数派意見だからといって意味がないわけではなく、今まで誰も見つけられなかったインサイトの種やヒントがそこに隠されている可能性も大いにあります。
こうした考え方をもとに、ドライヤーを事例として共起語を分析したものが以下の表です。

図4:「ドライヤー」の共起語

図4:「ドライヤー」の共起語


この中で注目されるのは「大変」に関連する語が比較的多く共起されていることです。

そこで、その引用元の記事をチェックしてみると、約半数がペットを乾かすときにヘアドライヤーを使用して「大変」だと書き込んでいました。また、残り約半数は6月に東京ドームで行われた『嵐のワクワク学校』というイベントで行われた節電をテーマにした発電実験(アイドルグループの嵐のメンバーが自転車を使った発電装置を3分間全力で漕いで蓄電したにもかかわらず、ドライヤーは10秒も使用できなかった)を題材に「ドライヤーは電力を使うので大変」ということを書き込んでいました。

こうした結果から、「手軽なペット用ドライヤーが開発できないか」「新商品は消費電力を減らせないか」というインサイトが得られるのではないかと思います。


(2)質の組み合わせ・掛け合わせ
次に行うのが、共起語の組み合わせ・掛け合わせです。「おむつを買った人はビールを買う傾向がある」という有名な分析例のように、スーパーなどの店頭で一緒によく売れることが多い商品の組み合わせを探して陳列する「バスケット分析」というマーケティング手法があります。

そうした手法を参考にしながら、【名詞×名詞】(製品名) ・【動詞×動詞】(利用コンセプト) ・【名詞×動詞】(利用状況)など、数は少なくても「ドライヤー」に共起している言葉を掛け合わせることでヒントが得られないか探ってみました。


■キーワード「ドライヤー」に対して出現率の高い共起語
温風、タオルドライ、乾燥、タオル、冷風、美容師さん、扇風機、ナノケア、熱風、ナノイー、熱、ソリス、ブロー、エアコン、アイロン、ブラッシング、髪、コテ、マイナスイオン、ブレーカー、リンス、髪の毛、毛先、寝癖、風、脱衣所、コンセント、部屋、バスタオル、洗面所、洗面台、トイレ、頭、サラサラ、水、洗髪、毛、テレビ、用意、状態、パーマ、頭皮、風量、洗濯機


■キーワード「ドライヤー」に対して出現率の低い共起語
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この中で、「ドライヤー」に対する出現率の低い共起語で、「人が髪を乾かす」という本来用途から想定しにくいものがありました。以下がその例です。

⇒「穴」?
これを詳しく見てみると、
・『ペットボトルに「穴」を開けて作成した、小鳥の餌の殻飛ばし器の動力源にドライヤーを使用』
・『餌が湿っているときは乾かせるので一石二鳥(ドライヤーの「吹き飛ばす」機能の利用)』
というブログの記事が見つかりました。

⇒「ほこり」?
これを詳しく見ていくと、
・『狭いところのほこりを吹き飛ばすために、エアダスター代わりに使用(ドライヤーの「吹き飛ばす」機能の利用)』
・ 『ドライヤーは吸気口にほこりが溜まりやすいが、分解する構造になっていないため、取り除こうとするとストレスが溜まる』
という記事が見つかりました。
こうした2つを掛け合わせることで、「送風機能を使って別用途に活かす」「分解掃除がしやすい構造」をドライヤーの新しいコンセプトにできるかもしれません。


(3)上記(1)と(2)の組み合わせ
前に述べた①(共起語分析)と②(共起語の掛け合わせ)を組み合わせることで、既存商品でネガティブ意見に見られる要望が、想定外の利用法で解決されている例や、ポジティブ意見でありながらも評価の方向性が開発コンセプトと異なっている例を発見することができると思います。

解説を目的としていますので、非常に簡単な例ですが、「送風機能を使って別用途に活かす」「分解掃除がしやすい構造」をドライヤーの新しいコンセプトするという考え方も成り立つかもしれません。




ソーシャルメディア調査と従来の調査を組み合わせることで、インサイトの仮説を強化!

以上のことからわかるように、ソーシャルメディア調査は、消費者の日常生活でのさまざまな商品利用実態をつかめるため、調査対象者に対する一定のコントロールがかかる従来調査と比較して、商品開発におけるインサイトのヒントを得るための有効な手法だということができるでしょう。

ただし、ソーシャルメディアをリスニングするだけですべての調査が完結するわけではありません。ソーシャルメディア調査は、従来の定性調査・定量調査の課題を補完するための有効な手法であり、そこで見出された新しい「気づき」をもとに仮説を立てて、定性調査や定量調査の項目に組み入れて検証していくのが望ましいカタチではないかと考えています。

図5:ソーシャルメディアと従来調査を組み合わせた調査フローイメージ

図5:ソーシャルメディアと従来調査を組み合わせた調査フローイメージ




次回は、風評対策を目的とするソーシャルメディア調査について述べてみたいと思います。