eコマースサイトで最も注力すべきは、認知よりもユーザビリティ

ウェブサイトにおける消費者のパーチェスファネルの図

ウェブサイトにおける消費者のパーチェスファネルの図
※各段階を経て、見込客は「ファネル=じょうご」型に減退します。

今回から、ウェブサイトの中で消費者の背中を一押しするなど、その特性を最も有効に発揮するEコマースサイトにフォーカスして、「マーケティングROI」について具体的に考えていきたいと思います。あるeコマースサイトに訪れたユーザーは、広告やPR記事などを見てその製品に興味があって来訪しているはずなので、前回のレポートで説明した「認知」から「リピート購買」までの数を示したパーチェスファネルで言うと、「認知」以降のプロセスが重要だということがわかると思います。

ただ、その場合、最も注力しなくてはいけないのは、どうやってそのサイトのユーザビリティを高め、「購買」までをスムーズに導けるようにするかということです。eコマースサイトにおけるユーザビリティとは、実際の店舗でいうと、商品のレイアウトや演出、販売員の接客対応に当たるため、決しておろそかにできないということをお分かりいただけるでしょうか。eコマースサイトとは、インターネット上の小売業なのですから、そうした仕組みづくりこそが最も大事だと言えるでしょう。

また、最近、多くの企業がウェブサイト上での販売を強化したいという意向を示しているようですが、それにはeコマースサイトの方が実店舗での販売よりも利益率向上が期待できるという背景があることも補足しておきたいと思います。




「作業管理.com」は、高い製品力がありながら、その魅力を訴求できていない

さて、eコマースサイトを運営するなかで多くの人が陥りやすい問題点の実例として紹介するのは、「作業管理.com」というログ管理ソフトです。アメリカで業界ナンバーワンのシェアを持ち、About.comのベストプロダクト賞を受賞するなど高い評価を受けているにもかかわらず、なかなか日本市場への浸透が進まない状況にありました。

いくら製品の性能が高くても、マーケティング力がないと購買に結びつかないのが今日のビジネスの難しさだと言えますが、「作業管理.com」も、“高い製品力を備えながらも、その魅力を訴求しきれていない”ことを現状の最大の課題と位置づけ、私たちはコンサルティングに着手しました。




ウェブサイトに絞って、マーケティング分析を進め、問題点を探る

まず、製品の4P(製品:Product、価格:Price、流通:Place、プロモーション:Promotion)といったフレームから、マーケティングの方法論上のどこに問題があるかを探りました。ただクライアント側から、チャネル施策上、ウェブサイトでの販売活動をメインにしていきたいという意向があり、現状のウェブサイトの問題に絞って分析を進めていくこととしました。

その際の注目ポイントは、一般にeコマースサイトを訪れたユーザーは、製品説明などを見て「考慮」した後、他の商品と比較する「意図・選考」を経て、実際に「意図・試行」してよかったら「一過性購入」というプロセスを辿るのですが、このウェブサイトでこうした仕組みがうまく機能しているかということです。ひょっとすると「意図・試行」の段階で、他のサイトへ行ってしまった後、そのまま戻ってこないなど取りこぼしてしまっている可能性もあると思われます。そのあたりも調査などを通じて探ってみる必要があるでしょう。




「作業管理.com」のページ構成上における最大の問題点とは!

こうした分析の過程で、このウェブサイト全体をざっと俯瞰してみて、ページ構成上における最大の問題点を、発見しました。それが以下のとおりです。

  • 商品の訴求ポイントが「明確」に前面に出ているページ構成になっていない

全体のデザインやトップページ上部のキャッチコピーも含めて、製品の訴求ポイントが前面に出ていないように感じます。Amazon.co.jpなどの商品詳細ページなど、商品のことをよく知っていて、購入を決めている人が対象なら、これでよいのかもしれませんが、ユーザーが最初に訪れるトップページとしては物足りない印象です。


1)機能訴求型の製品であるにも関わらず、最終的にどんな問題をどのように解決できるのかよく分からない

例えば、Microsoft社の「PowerPoint」を購入するビジネスマンは、現状のプレゼンテーションに不満があり、もっとキレイにクライアントの前でプレゼンテーションしたいと思って購入するのでしょう。しかし、「作業管理.com」の場合、このソフトを導入すれば、どんな問題をどのように解決してくれるかが、コンテンツの内容から把握できず、不満感が残ってしまいます。


2)米国での実績を踏まえた、製品の信頼性がうまく伝わっていない

この製品は、化粧品やビールといったイメージ先行型ではなく、機能訴求型の製品だと言えます。ですから、タレントなどを使ってイメージで訴求しても効果はなく、極めて実務的に製品特徴を紹介する必要があり、その際のキーポイントとなるのが、製品の持つ「機能と信頼性」です。ただ、信頼というのは曖昧な概念なので、アメリカでの過去の販売実績をもっとアピールすることが有効でしょう。また、機能については、大学教授の講義のように長々と語るのではなく、ユーザーのアタマに向けて無理なく、構造的に理解させる必要があるのですが、そうしたコンテンツ面へきめ細かい配慮も欠けているように思えます。

これまで述べてきたように、 eコマースサイトとは、インターネット上の小売業であり、実店舗の商品レイアウトや接客に相当するユーザビリティによって、各購買プロセスを経てユーザーを「購買」へ導いています。しかしながら、そうした誘導がうまく実現できていないということは、そのユーザビリティやコンテンツ内容に問題があるということをお分かりいただけるかと思います。



次回は、「実践マーケティングROI(後編)」で、この「作業管理.com」のユーザビリティ上の問題点をさらに細かく示すとともに、実際に被験者にウェブサイトを閲覧してもらった調査結果も紹介する予定です。



取材協力:GMOクリエイターズネットワーク株式会社



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