タッチポイントの概念の確認

前回の連載で触れたタッチポイントの概念について再確認します。

タッチポイントとは企業・ブランドと顧客(見込み客を含む)のあらゆる接点を指し、「顧客接点」とも言われる概念です。企業から顧客へとアプローチするメディア広告や、顧客が購買を検討して訪れた売場で掲示されたキャンペーンツールや実際の商品パッケージと接する場面が、主なタッチポイントとして挙げられます。

それ以外にもSNSや公式サイトで見たなどオンラインでの接触や、知人・友人との会話でブランドの評判を聞いたといった口コミによる情報伝達も、重要なタッチポイントになっています(図1)。最近口コミを利用したプロモーション手法は「バズ・マーケティング」と言われて注目されていますが、リアルな口コミが顧客との重要なタッチポイントであると認識されているからこそ、プロモーションの必要性が取り上げられていると言えます。

顧客は、複数のタッチポイントを経るうちに商品を認知し、関心を持ち、商品特徴を記憶して、「買ってみようかな」と購買を検討するようになります。したがって、分析に際しては、AIDMAという商品の購買決定プロセスに即して理解されることが一般的です。

タッチポイントの概念



広告ROI分析の流れ

近年、キャンペーンを実施する際には複数のメディアを戦略的に活用するメディアミックスが一般的となりました。そのため、広告ROI(Return on Investment/投資利益率)を算定する場合は、キャンペーン実施中にどんなメディアに接触したかという顧客のタッチポイントを漏らさず取得することが基本となります。なぜなら、同時並行的に展開されるテレビCM、ネット広告だけでなく、SNSや口コミなどが顧客にどんな影響を及ぼしているかをきちんと測定・分析していないと広告ROIを正確に算定できないからです。

基本的な流れは、以下になります(図2)。

まずキャンペーン実施前、調査対象者に対して、対象となる商品に関する認知度や購買意向についての定量的な調査を行います。次に、キャンペーン中に触れたテレビCM、雑誌広告、ネット広告、屋外看板、口コミなどのあらゆるタッチポイントをつぶさに記録してもらいます。さらにキャンペーン終了後には、事前調査と同じ設問で事後調査を行い、前後の変化を検出します。

例えば、キャンペーン実施前の調査で40%だった認知度が、事後調査では10ポイント向上して50%になっていたり、購買意向が10ポイントアップしたりしていれば、キャンペーンの効果はあったということになります。ただし、こうした数値の増減だけでなく、どのタッチポイントが認知度向上、ブランドイメージ向上、購買決定に影響を与えているかを分析していくことが、タッチポイントを活用した広告ROI算定のおおまかな流れだと言えます。

広告ROI分析の流れ




事前調査・事後調査・タッチポイント取得調査の実施詳細

3-1.事前調査・事後調査の手法
事前調査、事後調査は、オンラインアクセスパネルから調査対象者をセグメント別に抽出し、インターネットアンケートの形で行うことが一般的です。調査票には、調査対象となる商品やブランド、サービスの認知度、イメージ、購入意向、購入経験など、購買決定プロセスにおけるキャンペーンの影響を計測するための項目として設問を設定します。

ちなみに、事前調査と事後調査を通じて、認知度、購入意向、イメージといった項目の数値を想定することは、いわゆるブランドにおけるマーケティング目標を設定することと同義だと言えます。通常、このマーケティング目標を達成するために、キャンペーンが立案され、その中で前回紹介した購買ファネル(認知・興味・選考・試行・購買)のどのステージに予算を重点的に配分するかを決定していくのです。


図3に調査票の例を示します。

調査票の例


3-2.タッチポイント取得の注意点
タッチポイント取得調査は、オンラインアクセスパネルの調査対象者に対して、調査対象となる商品に関連するタッチポイントを2週間~1ヶ月間など一定期間取得してもらうことで調査を行います。この調査に関する重要な注意事項は以下の2点です。

①キャンペーン終了後、アンケート調査を通じて一度にまとめてタッチポイントを取得せず、実施中にスマートフォンのようなモバイルデバイスを用いて随時取得すること。

モバイルから随時入力することで、調査対象者の記憶違いをなくし、正確なデータを担保できるようになります。また、リアルタイムでデータが更新されるため、前日に入力されたタッチポイントであっても集計・分析対象にすることが可能です。キャンペーン終了後に事後アンケートでタッチポイントを取得していると、その結果を施策に反映することができませんが、キャンペーン実施中ならリアルタイムに分析結果を見たり、途中からネット広告を強化したりするなど、施策を細かく修正できるというメリットもあります。

タッチポイントをモバイルで随時取得する重要性


②メディア接触だけに限定せず、口コミや店頭接触、オンラインのサイト訪問など、考えられるタッチポイントを全方位から広く取得する。

実際に商品を認知したり、購買の決定キーになったりしているのは、企業の発信情報が顧客にダイレクトに影響を与えるメディア接触だけでなく、友人との日常会話や店頭での商品パッケージとの直接的な接触など、さまざまな場面が想定されます。仮に口コミについてのタッチポイントを取得しなかった場合、友人によるテレビCMの話 ⇒ 口コミで本人が認知といった重要な認知経路の情報が失われ、広告ROIが過小に算出される可能性があります。そのためキャンペーンに関連するメディア上の広告接触だけでなく、考えられるタッチポイント情報を全方位から広く取得する必要があると思われます。

タッチポイントを全方位から広く取得する重要性


3-3.タッチポイント取得の手法
タッチポイントは大きくオンラインとオフラインに分けられます。このうちオンラインはWebサイト上の動きについて、同意を得て調査対象者のcookie情報を取得することで自動的にアクセス状況を追うことができます。こうした仕組みがあれば、PCだけでなくモバイルでの追跡も可能です。それ以外のオフラインのタッチポイントやオンラインのメール受信やSNSでのやり取りは自動的に取得することは難しいので、調査対象者からタッチポイントに接するたびにモバイルで状況を報告してもらうことになります。

図6にタッチポイント取得用の調査票の例を示します。この中では、複数のタッチポイントを提示して、その中から接触したものを選択してもらい、その際の興味度に加えて、画像や簡単なコメントを挙げてもらうことを想定しています。

タッチポイント取得用の調査票の例




タッチポイント取得によって得られるローデータ

このようなタッチポイント取得を経て収集されたローデータは以下のようなものになります(表1)。実際は回答時に選択した項目の数字が表示されますが、ここでは分かりやすいように選択肢名に変換しています。

①データ通番

②調査対象者のID
タッチポイントに接触するたびに複数回回答するので、同じIDが繰り返し登場する。

③回答日時
調査対象者が回答した日時。

④場所/区分
調査対象者が入力した場所の区分(問1)。

⑤場所/位置
調査対象者の事前許諾を得てGPS取得した回答時の位置情報。

⑥タッチポイントの種別
調査対象者が入力したタッチポイントの種別(問2)。

⑦興味度
調査対象者が入力した興味度の5段階評価(問3)。

⑧画像
調査対象者がアップロードした画像(問4)。

⑨コメント
調査対象者によって書き込まれたコメント(問5)。

タッチポイント取得 ローデーター例


まとめ

今回の内容を集約すると以下の3点になります。

①広告ROI測定は、広告を展開するキャンペーンの前後に実施する事前/事後調査の結果の差異と、キャンペーン中のタッチポイント取得データを紐付けることで行われる。

②タッチポイント取得については「モバイルで随時アップしてもらう」「口コミや店頭接触まで含めて、全方位で広く取得する」ことが重要となる。

③タッチポイント取得は、オンラインのサイト訪問についてはcookie情報を取得することで自動的に行い、それ以外のオフラインを中心とした接触は、モバイルデバイスを用いて簡単なアンケート形式で実施する。



次回は、取得したデータをもとにしたタッチポイントの傾向分析や広告ROIの算出方法について解説します。