Emotion Measurement Series感性分析の概要

GMOリサーチが提供する「感性分析」は、株式会社夏目綜合研究所が開発・提供する「感性判定解析システム」と、GMOリサーチの「アイトラッキング」と呼ばれる視線計測システムとを組み合わせた生体反応測定調査です。

これを通じて、「何を見ているか」に加え、「どの程度注目したか(関心を示したか)」「どのような感情が表出したか」といった無意識の領域までも計測・解析することが可能になります。

図1 Emotion Measurement4 感性分析の概要


それでは、「感性分析」においてどのような情報を取得し、取得した情報をどのような手順で分析しているのかを以下で解説します。




感性分析を支える技術

感性分析を支える技術である「アイトラッキング」「感性判定解析システム」は、実際にどのような仕組みになっているのでしょうか?以下のマーケティング調査を想定し、取得する情報と分析の手順を紹介したいと思います。

目的:調査対象者に数種類の販促ポスター案を提示し、その反応を見て一案だけ最終案を選定する。

手法:調査対象者にモニターの前に座ってもらい、モニターに数種類のポスター案を画像として一種類ずつ全種類提示し、感性分析を行う。提示順はランダムとする。


■アイトラッキング(視線計測)とは?
「アイトラッキング」とは、調査対象者が何を見ているか(視線がどこにあるか)を計測する視線計測システムのこと。今回は、モニター上で刺激物である販促ポスターを調査対象者に提示するので、図2のような据置型のアイトラッカーを使用します。

図2 据置型アイトラッカーを用いた視線計測


人間の目はいわゆる「白目」部分と「黒目」部分があり、この「黒目」の中にも色のついた「虹彩」と呼ばれる部分と、その中に開いた穴である「瞳孔」部分があります。さらに、「虹彩」にある平滑筋が緊張したり弛緩したりすることで「瞳孔」を散大・括約させ、視神経に届く光量を自動調整しています(※1)。

アイトラッカーから調査対象者の眼球に向けて近赤外線(※2)を照射すると、眼球を薄く包む角膜に反射して角膜反射点と呼ばれる光点が生じます。この光点の位置(角膜反射点)は、視線の動きに伴って移動するため、「瞳孔」の中心座標(瞳孔中心点)に対して角膜反射点がどこにあるかを計測することで、モニターのどこを見ているのかをリアルタイムで逆算できます(図3)。たとえば、瞳孔中心点に対して、角膜反射点座標が身体の内側にあれば、「黒目」が身体の外側(目尻側)を向いていることになります。使用機材によって多少異なりますが、2015年現在0.2~0.5°程度の分解精度の計測が可能です。


図3 視線計測の原理


取得したデータは、表1のようにモニター画面のxy座標として記録されます。これによって、調査開始から○秒後の視線がモニターのどこにあったかを把握できるようになります。

表1 視線計測による取得データの例

本調査は静止画面を対象としているため、2点の座標の数値があまり変わらない場合は、近い位置を見ていると解釈できます。ただし、メガネ型のポータブルアイトラッカーの場合は、背景となる画像そのものが調査対象者の移動に追随して動くため、調査時に記録した調査対象者視点の動画も併用して解釈する必要があります(※3)。

(※1)瞳孔は年齢によっても変化し、高齢者ほど小さくなる。詳細は以下参照。
https://ja.wikipedia.org/wiki/瞳孔
https://ja.wikipedia.org/wiki/虹彩
(※2)波長約0.7 - 2.5 μmの電磁波。赤外線の中でも波長は赤色の可視光線に近い。目には見えず、調査対象者に悪影響を与えることはない。
(※3)多くのアイトラッキングシステムでは、記録した動画を背景に注視点をリアルタイム表示する機能が備わっている。


■情動反応(瞳孔径変化)とは?
目の中心にある「瞳孔」の拡大・縮小は人間の意志にかかわらず自動的に行われます。なぜなら、前者は交感神経、後者は副交感神経の働きで起きるからです。

興奮または緊張状態といった交感神経が活発な場合には「瞳孔」は拡大し、逆にゆったり弛緩している状態では「瞳孔」は縮小するため、瞳孔径の変化をもとに身体が興奮・緊張状態や弛緩状態にあることが判別可能となっています。


図4 瞳孔径の測定箇所


今回の調査では、据置型アイトラッカーに設置したカメラで撮影・記録することで、瞳孔径の拡大・縮小を認知し、例えば、瞳孔径が拡大している場合は視認している刺激物に対して注目度が高いと判定しています。ただし、ここで注意が必要なのは、瞳孔径変化を引き起こすのは自律神経(交感神経、副交感神経)の働きばかりではないことです。「瞳孔」の拡縮は視神経に届く光量調整を主たる目的としているため、暗闇では拡大し、眩しいと縮小するなど、明暗によっても瞳孔径は変化します。したがって、正確な調査結果を得るためには、単に瞳孔径を計測するのではなく、事前にモニターの輝度を変化させた動画によって調査対象者の明暗反応による瞳孔径変化を、あらかじめ事前に測定しておく必要があります。実際の調査ではその数値を除去して分析することにより、自律神経の影響のみによる瞳孔径変化の測定が可能になるのです(図5)。また、この輝度測定に際しても専用の輝度計を用いて精密な測定ができるようにしています。


■明暗反応による瞳孔径変化測定
輝度を0~100%に変化させたモニターを調査対象者に見せて、瞳孔径変化を事前に測定する。

■計測装置の調整
各調査対象者に合わせて、計測装置を調整する。

■実際の瞳孔径変化測定
実際の調査画面を用いて、本調査を行う。

■明暗反応を除去した瞳孔径変化を分析
実際の測定変化結果から、事前測定した明暗反応による瞳孔径変化を除去して分析を行う。

図5 瞳孔径の測定フロー



表2 瞳孔径測定の取得データの例


■表情反応(表情変化)とは?
表情反応の計測は、市販のWebカメラをアイトラッカーのすぐ近くに設置し、刺激物を見る調査対象者の顔の表情を撮影した動画を使って行います。秒間30フレームで記録された動画は、顔の特徴点を検出しやすいように陰影処理し、図6のように18ポイントの特徴点を認識して各ポイントの座標を記録します。このことによって各座標の位置関係から、その時々にどのような表情をしているかをリアルタイムに分析していくのです。

図6 表情の計測ポイント


取得数値は、夏目綜合研究所が開発した感性判定プログラムによって、「喜び」「怒り」「恐れ」「嫌悪」「悲しみ」「驚き」という人間の基本的な6感情に判定されます。表3のように、時系列で定量的な感情得点が記録され、当該数値が正の値になっているときに、その感情が表出していると判断します。表3の例では、0.5秒後から「驚き」、やや遅れて0.6秒後から「喜び」の表情が表出していると判断できると思います。これを図7のようにグラフ化することで、表情反応の可視化が可能となっています。

表3 表情変化の取得データの例



図7 表情変化の取得データを可視化した例(表3のグラフ化)




データの統合と解釈

これまで解説してきた「アイトラッキング」「情動反応」「表情反応」の3点は、すべて同期して計測されます。今回想定しているポスター案の検討でも、複数の調査対象者で以下のように3つの計測を同時に行い、これらを最終的にすべて統合して解釈します。

・どこを見ていて(アイトラッキング[視線計測])
・どの程度注目していて(情動反応[瞳孔径計測])
・どのような感情が表出したか(表情反応[表情変化計測])

図8 ある調査対象者の反応の例


仮に、ある調査対象者が図8のような反応を示したとします。
この場合は、提示されたポスターに対して、まずはタイトルに注目し、その後0.5秒程度で視線をイラストに遷移させ、驚きと喜びの感情を見せた後、注目度を下げつつ、0.8~0.9秒後にはタイトル下のサービス詳細情報に目を向けていることが分かります。
複数の調査対象者について同様の分析を行うことにより、「伝えたいコンセプトに注目しているか」「想定通りの感情が表出しているか」といった点を分析し、その結果をもって、最適なポスター案を最終案として選定することが可能になります。



まとめ

今回の内容を要約すると以下の5点になります。

1. 感性分析は「アイトラッキング(視線計測)」「情動反応(瞳孔径変化)」「表情反応(表情変化)」の3つの取得情報によって構成される。

2. アイトラッキングは、瞳孔中心点と角膜反射点の2点の座標を取得し、逆算することで、どの座標を見ているのかを算出している。

3. 情動反応は、取得した瞳孔径から、明暗反応の影響分を除去して算出している。

4. 表情反応は、顔の特徴点座標を取得し、感性判定プログラムによって、人間の基本的な6感情を判定している。

5. これら3つの取得情報を時系列で統合することで、「何を見ているか」に加えて「どの程度注目(関心)したか」「どのような感情が表出したか」を解析している。




次回は、感性分析を活用した実際の調査事例について取り上げます。