事例となる調査の流れ

今回はScanadesign新バージョンの解析方法とアウトプットの見方を解説しますが、その前に事例として挙げたデザインに関する調査の流れを再確認したいと思います。

調査の流れは以下のようになります。このフローの②で行う「もっとも好きな部分を指定する」プロセスを通じて表象化が終了し、指定した部分について背景にあたる情報を容易に記入できる仕組みになっています。




解析方法

旧バージョンのScanadesignでは、調査対象者が挙げた12個の言葉と選択した3つの画像を一対とした105通りのパターンに対する4段階評価を調査対象者自身が行うことにより、挙げられたすべての言葉(概念)の関係性を可視化していました。しかし新バージョンのScanadesignが使用するのは以下の①~③のみです。

①デザイン全体に対する4段階評価
②マウスで指定された「もっとも好きな部分」
③「もっとも好きな部分」について記述された言葉の数、およびそれらを合計した、デザイン全体の言葉の数

上記の3つを用いて可視化を行うため、調査対象者の負荷は大幅に軽減されます。

このうち①は、調査対象者を「好き」と評価した人と「嫌い」と評価した人に分けてセグメント別の分析を行うためのもので、②、③が概念構造マップ作成に直接関わる数値となります。

その解析は、図2のように「『もっとも好きな部分』に記述された言葉の数(例:かわいい(A1)16個)」と「『もっとも好きな部分』に記述された言葉の数を合計したデザイン全体の言葉の数(例:かわいい(A全体)62個)を行列化したデータと、デザイン全体に対する4段階評価を組み合わせて行われます。さらに、アウトプットとして概念構造マップを生成する際には、Scanadesign新バージョンでもScanamind同様に量子数理を用います。分析する対象が言葉(概念)どうしの組合せから、記述された言葉(概念)の出現頻度(記述数)に変わっただけなので、解析方法自体は変わりません。


解析方法




アウトプット

■部分評価
部分評価のアウトプットでは、あるデザインに対して、調査対象者がマウスで自由に指定した箇所(もっとも好きな部分)を把握することができます。アウトプットは各調査対象者の指定箇所のうち、近い座標にあるものがまとめて表示され、その枠線が太いほど選択された数が多いことを示します。また、まとめる範囲をピクセル単位で調整したり、記述された言葉が何個以上から表示するかという下限を設定したりと、表示の自由な調整が可能となっており、選択範囲の集中状況を反映した最適な表示ができます。下図3の例を見れば、女性のウェストからショートパンツを中心とした部分および右ひざが、好きな部分として選択されていることが一目瞭然です。

さらに、調査対象者が好きな理由として記述した、3つの言葉の出現頻度(記述数)が高いほど大きなフォントで表示されるため、着目された理由を知ることができます。これによって、ウェストの部分は「ベルト」、ショートパンツの「生地」やそれらの「色」が着目され、「セクシー」「キュート」というイメージが持たれていることが分かります。

デザイン全体に対する評価例


また、最後に取得した性別などの属性情報別に切り分けたり、4段階評価をしているので、「好き」を選択した人だけでなく「嫌い」を選択した人の評価結果を表示したりすることもできます。図4は男女別に表示した例ですが、この例では男性がウェストの部分を「セクシー」として指定し、女性は膝部分の「リボン」を「アクセント」「ポイント」として指定していることが分かります。

男女別評価例


好きな部分とデザイン全体の関係

概念構造マップを作成するにあたって、まず「2.解析方法」で解説したデータを用いると、「好きな部分」と「好きな部分について記述された言葉」の位置が量子数理により確定され、「各デザイン全体(イメージ画像)」は「好きな部分」すべての和であるため、すべての「好きな部分」の重心に位置することになります。このようにして、全体評価における「各デザイン全体」の位置も自動的に決定されるのです(図5)。


すべてのデザインに対する全体評価例

Scanadesign新バージョンのアウトプットは、Scanamindと同様に、円形の枠内に画像、言葉が配置された概念構造マップになります(図6)。これを見ると左右に「かわいい」⇔「かっこいい・シャープ」という対照的な概念が存在し、上下方向には「大人っぽい」「おしゃれ」と「キュート」「元気・明るい」の概念とが対立していることが分かります。それぞれの概念に近いファッションがどのようなものか、つまり調査対象者が持つファッションに対する概念構造を一目瞭然で可視化できるのです。

ちなみに、各デザインの「もっとも好きな部分」の部分画像までを一度に表示すると煩雑になるため、全体評価画面では表示されませんが、個別のデザインをクリックすれば、調査対象者が自由に指定した箇所(もっとも好きな部分)の画像も同時に表示できます。これによって、それぞれのデザインのどの部分が評価されているのかが分かるため、あるデザインがその位置にマッピングされている理由がどの部分にあるのかが明確になります。


デザインAの好きな部分に対する全体評価例


たとえば、図7において、赤枠で囲まれたデザインAは好まれている部分が広く分散し、「かっこいい・シャープ」と「キュート」「元気・明るい」のほぼ真ん中に位置しています。そうした部分ごとに異なるそれらのイメージを総合したものとしてデザインAが存在しているのです。その中で「キュート」「元気・明るい」はひざの部分、「かっこいい・シャープ」はウェスト部分に関連していることが分かります。

デザインEの好きな部分に対する全体評価例

ここで図8のデザインEを見ると、先ほどのデザインAと比較して、ごく狭い範囲に各部分が存在しており、それらがすべて「かわいい」イメージと結びついています。しかし、その中でも赤いサンダルは若干ながら「かっこいい・シャープ」な方向に寄っており、全体として「かわいい」イメージにまとまりながらも、その中ではアクセントとなるさし色として機能していることがうかがえます。このようにあるデザインを構成している各部分が異なった性質の組み合わせなのか、似た傾向の寄せ集めなのかも可視化することができます。

これまでは漠然としたイメージで語られることが多かったファッションデザインも、Scanadesign新バージョンを使えば、これまで述べてきたように論理的に説明することが可能です。

また、こうしたファッションデザインをはじめ、プロダクトデザインやクリエイティブデザインなどの評価についても、グループインタビューなどの定性調査を使えば可能ですが、Scanadesign は、インターネットを使って2000人といった大規模なサンプル数の調査対象者に対しても、手間をかけずに低コストで調査することができ、しかもスピーディーに分析結果が得られるのが特徴です。




まとめ

これまで6回にわたって連載してきたScanadesignについて、新バージョンの解析方法とアウトプットも含め、以下にまとめてみます。

①ScanadesignはScanamindの拡張版であり、デザイン(画像)を取り扱うことができる。

②デザインは調査主体側のリサーチャー等が調査対象者に提示するものであるから、提示された段階では表象化が終了していない。そのため、複数のデザインから好きなものを選択させたり、デザインのもっとも好きな部分を指定させることで、自然に表象化を完了する仕組みが組み込まれている。それによって、デザインをひとつの概念として他のデザインや言葉と比較することが可能になり、ありのままの概念構造を可視化することができる。

③Scanadesignの概念構造マップは、Scanamindと同様、量子数理により解析がなされ、自動的にマッピングされる。これを読み解くことで、複数の概念軸の存在とそれらの関係性を理解できる。

④Scanadesign新バージョンでは、「デザイン全体に対する4段階評価」「マウスで指定された『もっとも好きな部分』」、「『もっとも好きな部分』で記述された言葉の数、およびそれらを合計した、デザイン全体の言葉の数」を用いて解析を行う。ScanamindやScanadesign旧バージョンとは利用するデータは異なるが、量子数理を用いた解析を行った結果によって、概念構造マップにおける位置を決定することには変わりない。

⑤Scanadesign新バージョンでは、全体評価の中で各デザインの部分評価を確認することができ、あるデザインが概念構造マップにおいてその位置にあるのは「デザインに含まれる各部分がどういう概念構造になっているからなのか」「その背景となっている理由は何か」といったことが理解できる。




次回以降は、新シリーズとしてマーケティングリサーチにおける顧客接点としての消費者行動データの取得、分析について解説する新シリーズをスタートします。



※「Scanamind」に関わる技術は株式会社クリエイティブ・ブレインズが特許法に基づく特許権を取得しています(特許第3335602号,特許3278415号,特許3417941号,特許3638943号,特許4824837号)。
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