はじめに

オンラインコミュニティを使った定性調査である「MROC」。 「MROC」による調査設計概要および調査実施状況について紹介します。

◎MROCによる調査概要(GMOリサーチ(株)自主調査)※Scanamind調査概要はVol.6参照

[1]目的:コカ・コーラに対する消費者のイメージ構造の深掘りおよびScanamindとMROCを用いたハイブリッド調査の可能性を示す

[[2]調査時期:
[日本]2013年5月27~6月9日
[中国]2013年6月6~19日

[[3]調査対象:
[日本]GMOリサーチ保有オンラインパネルinfoQ
[中国]GMOリサーチクラウドパネルChina Cloud Panel

[[4]参加者数:
[日本]50名 調査実施期間を通して最後まで参加した参加者27名
[中国]50名 同41名


◎MROCの実施状況

[1]調査対象者の条件:
20~30代で0~12歳の子どもがいる男女(学生・無職は除く)

[2]調査対象者に与えたタスク
・自己紹介
・飲用シーン、飲用理由
・コカ・コーラのイメージ
・子どもに飲ませるかどうか
・イメージの変化
・コカ・コーラにまつわるストーリー
・コカ・コーラと健康
・感想




MROCによる深掘り調査を行った4つのテーマについて

今回は、Scanamindで得られた「うれしいイメージについて」「コカ・コーラを飲むシチュエーション」「健康」「料理(コカ・コーラ鶏手羽)」という4つのテーマについて、MROCを使ってその背景を探るための深掘り調査を行いました。以下、テーマごとにMROCの調査実施内容、考察、結論をご紹介します。なお、中国では中国語で調査を実施しましたが、本記事における中国での発言内容は、日本語に翻訳したものを掲載しています。


(1)コカ・コーラに対する「うれしい」イメージを形成されるに至った要因の比較(人生におけるコカ・コーラへの接触過程)
Scanamindでは日本・中国で共通したコカ・コーラのイメージとして「炭酸」「定番/どこでも」「ファーストフード」などが挙げられました。ところが、「うれしい」というイメージだけは中国だけに見られるカテゴリであった(図1)ため、この背景に何があるのかについてMROCで深掘り調査を行いました。具体的に、「子どもの頃のコカ・コーラのイメージと、それが大人になるにつれてどのように変化してきたか(コカ・コーラへの接触過程)」を比較してみました。

「うれしい」イメージへの差異

>【MROCによる調査結果1】日本・中国のコカ・コーラ接触過程比較(PDF:450KB)

【考察】日本・中国における共通事項

子ども時代:通常はほとんど飲まなかったが、特別な日だけは飲むことができた。

青年時代:仲間内で楽しんでいるときに少しずつ飲むようになる。

大人(現在):日常生活の中で普通に飲む飲み物

※ 飲むときの感覚:日本・中国ともに日常の生活に溶け込んだ飲み物になっているという点では変わりませんが、中国では経済的に裕福になった証だととらえられている部分があると想定されます。以下の中国人男性(30代)の発言を読むとそのことがよく分かります。


「よく覚えているのは小さい頃の春節の思い出です。ふだん、大人(親、親戚など)はあまり子どもにコカ・コーラを買ってくれませんでしたが、春節のお祝いでは、餃子を食べたり、コーラを飲んだりすることができました。当時、中国はまだ貧しくて、現在のように何かを食べたり飲んだりしたくても、すぐ買うことができなかったのです。一番印象に残っているのは、家族全員で一本のコーラしか買えなかった新年のことです。大人が一杯ずつ飲んだら、子どもは飲めなくなったので、母さんは自分の一杯を私にくれました。そのとき、将来生活レベルがよくなったら、必ず母さんにコーラをワンケースで買ってあげると誓いました。今思い出すと、少し笑える話ですが、当時は確かにそう思ったのです。コカ・コーラは私たちの生活の進歩、社会の発展、私たちの成長してきた全ての段階とともにありました。お祝いのときは毎回コーラと深い縁を結びました。」(中国 30代男性)下線筆者


・今回の調査対象者である20代後半~30代は、1970年代前半~1980年代後半生まれです。日本では石油危機によって高度経済成長が終了した頃で、中国は文化大革命が終了し、改革開放経済がスタートするといった、まさに経済発展のスタート前夜に当たります。 そのためMROCの結果からは、中国ではコカ・コーラが富の象徴として認識され、幼いときには経済的事情から特別な日にしか飲めなかったコカ・コーラが、家族団欒の中の幸せの記憶として強固に焼きついていることが分かります。「うれしい」イメージは幼い頃の幸せの記憶が背景となっていたのです。

(注)コカ・コーラは1920年代に初めて中国で販売されましたが、一時販売を中断し、1980年前後になって再び販売されるようになりました。今回の調査対象者の生まれた頃にあたります。


【結論】
日本・中国におけるコカ・コーラへの接触過程について、「子どもの頃はコカ・コーラをあまり飲めず、学生時代に仲間と一緒のときに飲むようになり、大人になってから日常生活の中で普通に飲むようになった」という傾向は共通しているようです。

ただし、「子ども時代にコカ・コーラをあまり飲めなかった」理由が、日本では健康に配慮した周囲の大人の影響、中国では経済的事情という点で異なります。

Scanamindでは日本でも「うれしさ」に関する言葉がいくつか挙げられていました(図1左)が、それは「団欒の記憶」に類するうれしさというより、子ども心に大人の飲み物を飲めたという好奇心が満たされるうれしさが強いように感じられます。「コカ・コーラを大人の飲み物だと思っていた」ことについては、以下のような日本人女性(30代)の発言があります。


「たぶん、大人の飲み物だと思っていたのは、『炭酸飲料=嗜好品』のイメージが強かったからかもしれません。嗜好品はお酒やタバコなど、大人がたしなむものという勝手なイメージで、炭酸飲料も大人になってから飲むものだと思い込んでいたような気がします。だから、子どもの頃、親に「だめだ」と言われても素直に飲まずにいたのだと思います。」(日本 30代女性)下線筆者



(2)コカ・コーラを飲むシチュエーションの背景にある日本・中国の文化に根ざした相違点について
Scanamindによる調査では、コカ・コーラを飲む際のシチュエーションについて、日本でも中国でも「暑いとき/喉が渇くとき」「ファーストフード」で飲むという共通項目があります。しかし、一家団欒の際に、家族や親族で集まった場で飲むというシチュエーションは、中国だけに見られるようです。

「暑いとき/喉が渇くとき」でも、細かくシチュエーションを掘り下げていくと、日本・中国の文化に根ざすと思われる細かな相違点を見出すことができます(図2)。[1]家族・友人と一緒のとき、[2]料理を食べるとき、[3]暑いとき・喉が渇いたときなど、これらについてMROCで深掘り調査を行った結果から、日本・中国の文化的差異を探ってみました。

コカ・コーラを飲むシチュエーション


[1]家族・友人と一緒に過ごすとき

家族・友人と一緒に過ごすとき

【結論】日本では「家族や友人とファーストフードに行くとき飲む」のに対して、中国ではファーストフードに限らず、知り合いが集まって楽しく飲むイメージが強いようです。




[2]料理を食べるとき

料理を食べるとき

【結論】日本では【表1】でもあったようにファーストフードでの定番メニューという声が最も多く、それ以外では油っぽいものや肉料理を食べるときに、口直しとして飲むという意見がいくつか見られました。これに対して中国では、圧倒的に火鍋、四川料理というシチュエーションが多く、辛いものを食べる機会において一緒に飲むだけでなく、普通に食事をするシーンでもコカ・コーラが一定割合で飲まれていることが推察できます。




[3]暑いとき・喉が渇いたとき

暑いとき・喉が渇いたとき

【結論】日本・中国いずれも、暑いとき・喉が渇いたときに飲むというシチュエーションに差はありません。しかし、発言を詳細に見るとその背景に以下のような特徴が見受けられます。

・「喉が渇いたとき」の違い
日本では「入浴後に喉が渇くので、よく飲む」という発言が、参加者から比較的多く挙げられていますが、中国では少数でした。中国の入浴は日本と異なり、シャワーのみであるため「喉が渇く」という場合が少ないからではないかと推察されます。
また、中国では「運動、スポーツの後」という発言が比較的多く挙げられましたが、日本では少数意見でした。日本でスポーツの後に飲まれるのはお茶やスポーツドリンクなのに対して、中国ではその役割をコカ・コーラが担っていると思われます。これは日本と中国で、飲料のカテゴライズに違いがみられ、マーケティング上、コカ・コーラの味や炭酸の強さも異なっている可能性もあり、単に文化の違いだけが背景の要因とは断言できません。しかし、中国ではコカ・コーラが本格的に喉の渇きをいやすための一手段として消費されているのに対して、日本で喉の渇きをいやす飲み物は無糖のお茶類などが主流で、「炭酸」「甘さ」といったコカ・コーラの有する嗜好品としての側面が好まれていると推測されます。



[4]その他

その他

【結論】日本では[3]で取り上げたように「甘さ」にこだわる発言が見受けられました。糖分によって疲れをいやすという面が重視されているところがあります。これに対して、中国においては日常的に飲まれるなど、普通に水分補給のために利用されていることが伺えます。



(3)日本・中国の調査対象者のコカ・コーラに対する健康イメージ
Scanamindで得られたコカ・コーラについてのイメージ構造では、図3のような日本・中国の差が生じました。つまり、日本ではファーストフードに付随する高カロリーなイメージが存在するのに対し、中国ではそれがまったく見られなかったのです。そこでMROCでは、コカ・コーラに対して健康面でどのようなイメージを持っているか調査しました。


Scanamindにて日本で高カロリーのイメージ


コカ・コーラに対して健康面

【結論】
日本では糖分を気にしているという声が圧倒的に強く、 飲むときもコカ・コーラゼロにしているという発言もかなり多いようです。特に子どもについては、飲み過ぎないようにコントロールしているという調査対象者がほとんどでした。

中国でも、日本と同じく糖分に言及している発言が半数程度あります。しかし、それと同時に、他の飲料と比べるとビッグブランドで信頼性があるという意見も多く挙げられており、食の安全性という点で、日本との差異があると考えられます。

子どもがあまり飲み過ぎないようにする、という点は日本と変わりませんが、日本よりかなり緩いイメージのようです。また、(1)のコカ・コーラの接触過程で挙げられた「経済的成功を体現している前向きなイメージ」「幼少より形成された『うれしい』という幸せのイメージ」「水分補給のために日常的に飲む消費パターン」という複数のポジティブな感情が、不健康なイメージにつながりにくくさせていると思われます。



(4)「コカ・コーラ鶏手羽」について
Scanamindで得られたアウトプットの中で、中国だけに「コカ・コーラ鶏手羽」が挙げられていました。この言葉は「旧正月」「楽しい」といった言葉と関連付けられていたことから、おそらく中国で、家族や友人が集まったときに食される家庭料理なのだろうという予測がつきます。日本ではあまり一般的ではない「コカ・コーラを用いた料理」が、中国では認知されているかについてMROCで調査しました。


コカ・コーラ鶏手羽


コカ・コーラ鶏手羽に関連づいた言葉


【結論】「コカ・コーラ鶏手羽」は、Scanamind で関連の強い語として挙げられた言葉から推定されるように、中国の家庭では一般的な、コカ・コーラを使用した煮込み料理でした。MROCでは鶏手羽以外にも、コカ・コーラを使用した煮込み料理が数多く挙げられました。



まとめ

調査対象者の集団の中では一般的と思って挙げられた言葉が、その文化的背景を知らないリサーチャーから見れば、一見しただけでは分からないということは少なくありません。その場合、Scanamindで得られたアウトプットに対してMROCを用いて背景を探ることで、新たなインサイトを見つけたり、対象者集団に対する理解が深められたりする可能性があると言えます。



次回、調査票のいらない調査「Scanamind」シリーズの最終回は、Scanamindの全体総括とまとめを予定しています。



※「Scanamind」に関わる技術は株式会社クリエイティブ・ブレインズが特許法に基づく特許権を取得しています(特許第3335602号,特許3278415号,特許3417941号,特許3638943号,特許4824837号)。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
※「Scanamind」は株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※「Scanamind」公式サイトhttp://www.scanamind.jp/