今、調査票のいらない調査が注目されている

【1】旧来のマーケティングリサーチの問題点
これまでのマーケティングリサーチでは、定量・定性に関わらず、リサーチャーが事前に調査設計に応じた調査票を準備し、アスキング(質問)を行っていました。

ところが、リサーチャーの想定した範囲内でしか調査票は作成できないため、想定外の重要な回答が調査票から抜け落ちてしまう危険性が常にあります。


例えば、以下のような調査票をリサーチャーが作成したとします。

これらの項目以外に、回答者は、「環境に配慮されているから買った」「広告が面白かったから買った」と思うかもしれません。しかし、このような意見があってもリサーチャーが想定した選択肢にないので、回答として表出しません。また、想定外の回答を求めようとして「5.その他」を設けても、「わざわざ言葉で書くのが面倒だから、適当に選択肢から選ぶ」「『その他』になるけど、自分でも言葉でうまく説明できない…」など、回答者にうまく活用されないケースも多いようです。

つまり、リサーチャーが想定外の回答を漏らさないために、選択肢に「その他」を設けて自由に記述してもらおうとしても、回答者はわざわざ考えて記述することを面倒に感じるだけでなく、言葉でうまく表現できない場合もあります。
アスキング中心の調査体系でリサーチャーの想定範囲を超えるインサイトを発見することはなかなか難しいと言えます。



【2】近年になって登場してきた「調査票のいらない調査」
そもそもアスキングは「回答者が回答を明確に意識していて、少し考えれば短時間で意識下から回答を引き出せること」を前提としていると言えるでしょう。

しかし、「ある商品を好きになる」「特定のブランドに対して何らかのイメージを持つ」といった行動は、そのほとんどが無意識下のプロセスです。質問をされても意識していないため、自分の力で無意識を表層化し、その概念構造について説明することはそもそも不可能であると考えられます。逆に、無意識下に沈殿している回答者の概念構造を、無理なく引き出すことができれば、購買行動に結びつく大変有用な情報となる可能性があると言えます。近年、アスキングを行わずにこれらを可能にする「調査票のいらない調査」が次第に確立されつつあり、GMOリサーチでも消費者の日ごろ意識していない購買行動プロセスを可視化する調査手法の開発に取り組んでいます。

【3】「調査票のいらない調査」の事例
これまでも本レポートで紹介してきていますが、「調査票のいらない調査」の事例としては以下があります。


(1)ソーシャルメディアリスニング
オープンなソーシャルメディアやクローズドコミュニティを使った手法。それらの中で、調査対象者が交わす自由な会話をひたすらリスニングしていくことで、調査に沿ったインサイトを発見していく。


(2)ブランデッドコミュニティ
MROCといわれるコミュニティ調査の一種。特定のブランドを使用する会員コミュニティなどをリサーチャーが観察することで、無意識に発言される会話からインサイトを引き出していく。


(3)アイトラッキング
人間は無意識のうちに興味のある対象に視線を向ける傾向がある。この傾向を生かして店舗や商品棚の前で、調査対象者が視線を向けた対象物やその長さをデータとして読み取っていく手法。質問をしないため余計なバイアスがかからないのが特徴だ。


(4)EEG(脳波)測定
脳波を測定することで、調査対象者のリラックスした状態や興奮した状態を識別する。与えられたどんな情報によって、 対象者の精神状態が変化したかをデータとして読み取る。


(5)GSR(ガルバニック皮膚反応)測定
人間の生理的覚醒度を、皮膚表面の電気伝導度で測る手法。興奮に伴って生じる発汗や、皮膚表面の電気抵抗が変化する度合い を読み取ることで、調査対象者の精神状態を測定することができる。


(6)表情認識
顔画像処理によって人物の感情(喜び、悲しみ、驚き等)を認識し、言葉によらない情報を読み取る技術。すでにヒューマンインターフェース研究の分野では広く応用されており、マーケティングリサーチにおいても、様々な消費行動における消費者の無意識な反応を推測する手法として活用が期待されている。


(7)来店客の性別・年齢判定および陳列商品に対する関心度測定
GMOリサーチが開発に参画する、対象物に対する調査対象者の関心度を測定する技術。カメラから見た調査対象者の性別・年齢を高い精度で測定できるシステムと、いつ、どの商品が、どのくらいの時間手に取られたかというデータを組み合わせることで、性・年代セグメント別の調査対象者の興味関心を定量的に測定することができる。



調査票のいらない調査「Scanamind」

【1】Scanamindとは何か
近年になって急速に発展してきた「調査票のいらない調査」の中で、「Scanamind」という、日ごろ回答者が意識していない概念構造を可視化できる調査・分析手法が注目を集めています。

Scanamindは、これまでリサーチャーが選択肢を想定して調査票を事前に作成した旧来型の調査と異なり、「回答者自身が」その場で選択項目を作成して自ら評価を行うため、選択された言葉が回答者の想定しているものと100%重なることになります。そのため、リサーチャーの想定に縛られることなく、回答者のイメージを過不足なく拾い上げることが可能です。Scanamindという言葉のとおり、「深層心理をスキャンする」調査・分析手法だと言えるでしょう。


【2】Scanamindを使用した調査の流れ
以下にデータのインプットおよびアウトプットに分けてScanamindの流れを説明します。

●データのインプット
[1]調査テーマに関連する項目の入力

商品のイメージとして思いつくものを12個リストアップします。入力項目数が少なすぎると精度に問題が生じ、多すぎると評価に時間がかかりすぎるので12個程度が適当だとされています。


選択した12項目について、ペアとなる66組の全組み合わせの関係が、それぞれ強いか弱いかを判断して4段階から評価します(無意識の部分を表象化するため2秒以内の直感的な回答が理想)。それぞれの回答者が、自らイメージした言葉について回答するため、最終的な結果がリサーチャーの想定に拘束されず、バイアスが生じにくいと言えます。



[3]Scanamindの分析手法
Scanamindでは、回答者がそれぞれ独自の評価項目を作成しているため、旧来の統計的手法では分析する枠組みがありません。そのため、評価項目が同一でなくとも統合分析が可能な量子数理(*)を用いています。

*量子数理…電子や原子核といった微視的スケールでの物理現象を扱う量子力学を記述するための数学体系。



【3】データのアウトプット
Scanamindのアウトプットは、評価項目がそれぞれの関係に応じて円形に配置されたものになります。このため、複雑な数値データではなく、評価項目どうしの関係を見える化でき、視覚的に理解することが可能です。公式サイトでScanamindを使った調査が体験できますので、一度お試しください。

スキャナマインド公式サイトはこちら


株式会社クリエイティブ・ブレインズ自主実施結果より (2012年8月21日~22日実施、N=2059、GMOリサーチが保有するインターネット調査パネルinfoQを使用)



次回は、Scanamindを使った調査の設計概要ならびに得られた知見とアウトプットの活用事例について紹介する予定です。





※Scanamindに関わる技術は株式会社クリエイティブ・ブレインズが特許法に基づく特許権を取得しています(特許第3335602号,特許3278415号,特許3417941号,特許3638943号,特許4824837号)。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
※Scanamindは株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※Scanamind 公式サイトhttp://www.scanamind.jp/