小売チェーンが行ったアニメ番組タイアップ企画を対象に「ソーシャルメディア調査」を実施

前回のレポートでは、ソーシャルメディア上の情報をソースとして調査・分析し、「販売促進」「商品開発」「風評対策」など企業個別のマーケティング目的に合わせて活用する「ソーシャルメディア調査」というサービスをGMOジャパン マーケット インテリジェンス株式会社が開発したことを述べました。今回は「ソーシャルメディア調査」を使って「販売促進」の効果測定について小売チェーンAが行ったアニメ番組タイアップ企画の事例を使って解説したいと思います。

まず、ソーシャルメディアを利用した効果測定で検証する内容は以下の3つがポイントとなります。

1) プロモーション前後の口コミ量の変化[定量的検証]
2) プロモーション前後の口コミの評価内容の変化[定性的検証]
3) 口コミの伝播状況、キーマンの特定[ネットワーク分析]

これらについて、一つずつ検証結果を踏まえて解説していきたいと思います。




実例(1) 口コミの量の変化を分析する定量的検証

今回対象としたのは、2010年10月から2ヶ月間店頭で展開された「タイアップ飲料キャンペーン」および2010年11月9日からスタートした「小売チェーンA限定アニメ番組オリジナル商品キャンペーン第1弾」と、2011年5月10日からスタートした「小売チェーンA限定アニメ番組オリジナル商品キャンペーン第2弾」です。

第1弾はアニメ番組テレビ本放送終了直後ということもあり、ブログ記事内のキーワード「小売チェーンA」に「タイアップアニメ番組」が含まれている共起率(折れ線グラフ)は32.9%に達しました。これと同時に、それまで1,000~1,500記事/週であった「小売チェーンA」というワードが含まれているブログ記事の数(棒グラフ)が、2010年11月5日~11日には3,548記事と約2.5倍強に急上昇しました。このことにより、番組のコアファン層だけでなくライトファン層を巻き込んだプロモーションになったことがわかります。

次に、「小売チェーンA限定アニメ番組オリジナル商品第2弾」においても、キーワード「小売チェーンA」に対する「タイアップアニメ番組」の共起率は2011年5月6日~12日で35.9%に達し、ターゲット層に強く支持されていることが表れています。しかし、第1弾と比較すると「小売チェーンA」の口コミ数は同期間で2,062記事にとどまっており、番組のライト層を含んだ幅広い購買ではなく、コア層中心に移行していると言えます。

図1 ブログ記事数に見る小売チェーンAのアニメ番組タイアップ企画の盛り上がり

図1 ブログ記事数に見る小売チェーンAのアニメ番組タイアップ企画の盛り上がり




実例(2) 口コミの内容を評価する定性的検証

ただ、プロモーション効果の検証では口コミ数の推移とともに、その内容がポジティブかネガティブかを見極めることが重要です。そこで、口コミの内容を評価するために、小売チェーンA限定アニメ番組オリジナル商品キャンペーン「第1弾」「第2弾」の共起語を比較しました。それが以下の図2です。


図2「小売チェーンA限定アニメ番組オリジナル商品」第1弾と第2弾の比較

図2「小売チェーンA限定アニメ番組オリジナル商品」第1弾と第2弾の比較


全体として「欲しい・よい・好きだ」といったポジティブな評価が多くを占める中、ネガティブ評価では「ない・なかった」というキャンペーン商品が品薄となり入手できないことへの不満がほとんどで、この傾向は「第1弾」「第2弾」も大きな変化はありません。  つまり、このことによって今回の企画は小売チェーンの顧客層にとって評価が高かったと総括できるばかりか、顧客層とアニメファンの層の共通性も想定できるのではないでしょうか。ただ、「第2弾」でキーワード出現数に対する全体的な割合が低くなっているのは、ライト層のブロガーが減っていることを表していると思われます。




実例(3) 口コミの伝播状況、キーマンは誰かを特定するネットワーク分析

次に、今回のソーシャルメディア上での情報の伝わり方を検証してみました。ここでは、2011年2月8日からスタートした「タイアップ飲料キャンペーン」を調査対象としています。
ここでキーとなっているのが「まとめサイト」です。ここは主にネット上のコア層と呼ばれる個人が定期的(ほぼ毎日)に大手掲示板をクローリングした業界・興味に特化した濃い情報が整理・掲載されています。2011年1月19日朝に、一次ソースである大手掲示板のスレッドに書かれた本プロモーション情報はほぼその日のうちに「まとめサイト」に掲載され、それが別のまとめサイトや個人ブログ、TwitterやFacebookへ伝播しています。また、ライト層は、多くのスレッドが立って複雑な構造になっている大手掲示板などの一次ソースを敬遠し、「まとめサイト」にアクセスしていることも注目されます。

図3 事例:2011/02小売チェーンAタイアップ飲料キャンペーン内容の伝播

図3 事例:2011/02小売チェーンAタイアップ飲料キャンペーン内容の伝播



“情報のキュレーター”であるコア層を押さえることがメディアパス設計のポイント

ころで、現在、情報のキュレーションという言葉が注目されているのをご存知でしょうか。そもそもキュレーションとは博物館や美術館で作品や資料を整理・管理・研究し、わかりやすい展示を行うことを指しますが、多様な情報があふれるインターネット上において、独自の価値基準のもとで意味付けを与える情報のキュレーション作業を行っているのが、いわゆるコア層が運営する「まとめサイト」だと言えるでしょう。これらのサイトには、ライト層の人々(美術館では観客に当たる)がアクセスして、そのネタをソーシャルメディア上に転載・拡散しています。
こうしたコアな情報発信は、従来はマスメディアが担っていたものですが、店頭アニメ番組タイアップ企画などのマニアックな関心対象は、「まとめサイト」がインターネット上で拾い上げていると考えてよいでしょう。
このような口コミの伝わり方を意識したプロモーション展開のポイントは以下になります。

(1) オフィシャルサイトをどのように参照させるか
単にオフィシャルサイトで情報発信するだけではライト層はアクセスしてくれません。そこで、ライト層をオフィシャルサイトに誘導するきっかけとなるよう、「まとめサイト」がオフィシャルサイトの参照URLを貼り付けてもらえるようなプロモーション設計を行うことが大切だと言えます。

(2) メディアパスをどのように設計するか
マスメディアと違ってソーシャルメディアの場合はターゲットにダイレクトにリーチするのは難しいかもしれません。そこで一次ソースの受容者(≒インフルエンサー・掲示板利用コア層など)からターゲットまでのメディアパス(情報経路)をどのように企画の中で設計していくかが重要だと言えます。

図4 リアル世界からソーシャルネットワークへの情報伝播の構造図

図4 リアル世界からソーシャルネットワークへの情報伝播の構造図

以上のことから、ソーシャルメディア調査を通じて、ブログ記事などの口コミの量と質、伝播状況、そのキーマンを把握することで、実施したプロモーション内容を検証できるとともに、その情報を活用することによって、次回の施策をより一層の成功に導くことも可能だと思います。




次回は、商品開発を目的とするソーシャルメディア調査について述べてみたいと思います。