「定量調査」と「定性調査」における調査票の違いとは

これまでのレポートで、マーケティングリサーチでは、設定された仮説が調査項目に落とし込まれて、調査票の質問項目になっていくという話をしたと思いますが、そういった意味で、「調査票」とは、調査企画をもっとも具体化したものであるということが言えます。言い換えれば、調査票とは、リサーチ課題達成のための、情報収集の手段であり、要するに調査企画そのものであるということが言えるでしょう。

面接法の調査員作業手順と呈示カード例

面接法の調査員作業手順と呈示カード例


定量調査(いわゆるアンケートなど)の場合

定量調査は、質問文に対して当てはまるものを調査対象者に選ばせる形式のため、その選択肢が適切で、必要な要素がすべて網羅されていなければなりません。例えば、ペットボトルのお茶に関する調査を行い、飲んだ後の感想を選択肢で回答させるとしたら、「おいしい」だけでなく、「苦い」「渋い」など、様々な人がお茶について感じる味覚を全部あげないといけないのです。だからこそ、調査票は情報収集の手段であり、調査企画そのものであると言えると思います。こうした定量調査は実査方式によって「面接法」「自記式法」などに分類することができます。

・面接法
基本的に調査員が質問文を読み上げ、回答の選択肢が記載されたカードを調査対象者に呈示して、調査員がその回答を記入する形式をとります。実際に調査員が調査対象者と対面しているので、回答の不備を修正しながら調査を進めることができるというメリットがあります。

・自記式法
調査対象者が、質問文を自分で読んで回答する形式です。その場合、調査対象者が質問文の一字一句をきちんと読むとは限らず、回答のすべてが、調査対象者の任意かつ善意に委ねられています。そのため調査対象者の読む負担や回答する負担をできるだけ少なくすることが必要だと言えます。

・その他、電話法など


定性調査(いわゆるインタビューなど)の場合

定性調査の場合は、選択肢から当てはまるものを回答させる形式ではなく、全体の流れやインタビュー項目が記載されたインタビューフローやディスカッションガイドが作られ、そこでの『聞き方』がポイントになります。こうした定性調査の場合は、例えば、「このお茶っておいしいと思いましたか?」と聞くよりは、「飲んでみてどう思いました?」と聞いたほうが適切だと言えます。その理由は、前者の場合、「おいしい」「おいしくなかった」の2つしか回答されませんが、「どう思いますか?」と聞いた場合、「苦かった」など、それ以外の調査対象者の自発的な考えが回答として期待でき、そこから話が広がっていく可能性があるからです。こうしたインタビュー時の調査対象者の回答は、発言録としてまとめられます。





定量調査の調査票づくりでは「尺度」を理解することが重要

定量調査の調査票とは、いわば測定するための“ものさし”であると言うことができます。そのため、質問文の内容は、調査対象者全員に正しく、同じように理解されなければなりません。さらに、選択肢は、調査票という測定装置における“目盛り”の役割を果たすため、調査を行ううえでは、適切な目盛りを選ぶ必要があります。

例えば、象の体重を測る場合はキログラム(もしくはトン)、ネズミの体重を測るのはグラムという単位の目盛りになるのが一般的ですが、象の体重を測るのにグラム単位を使ったり、ネズミの体重を測るのにトン単位の目盛りを使ったりすると、適切な評価ができなくなってしまいます。 こうした選択肢を構成するのが、尺度と呼ばれるものです。

尺度の意味を正しく理解しないと、象の体重をグラムで測定するといったことになってしまうのです。





選択肢を構成する「尺度」には4種類ある

尺度は以下の4つに分類することができます。

1.名義尺度

対象を区別するために数字を割り当てるもので、割り当てられた数字に意味はなく、名称や識別記号と同等です。
<>また、個々の対象が分類できればよく、分類に支障がない範囲で数値を任意に選べます。

例: 1. 男性 2. 女性  または  1. 女性 2. 男性

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名義尺度をもとにした演算について

計算(カウント)、計算の比、モード

例:男性 80%、女性 20%、男性は女性の4倍である。


2.順序尺度

対象の量の大小や強弱の順序関係を区別する値です。
ただ単に順位だけを表している尺度なので、各値の間隔は等間隔ではありません。

例:学校での成績の5、4、3、2、1、クラスの中での成績の順位、Jリーグの順位

1.名古屋グランパス 勝点 72
2.ガンバ大坂 勝点 62
3.セレッソ大坂 勝点 61

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順序尺度をもとにした演算について

<計算(カウント)、計算の比、モード>、中央値

例:調査対象製品の使用後の評価として、非常に満足している(5%)、やや満足している(10%)、どちらとも言えない(15%)、あまり満足していない(40%)、全く満足していない(30%)となった場合、中央値は『全く満足していない』となる。


3.間隔尺度/距離尺度

間隔が等しい尺度(等間隔)です。ただし、原点(0)が存在しません。そのために、数値間の比に意味がないということになります。

例:気温0℃と20℃の間は、0℃と10℃の間の2倍の差がある。しかし、20℃は10℃より2倍暑いとは言わない。(言っている人がいたとしても、使い方が間違っている)

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順序尺度をもとにした演算について

<計算(カウント)、計算の比、モード、中央値>、和、差、平均値

例:気温20℃より10度高い気温は、30℃である。気温30℃から5度下がると25℃になる。1週間の平均気温、1ヶ月の平均気温も計算可能。


4.比尺度/比例尺度・比率尺度

原点(0)が存在し、原点(0)に意味があるのが比尺度である。

例:身長、体重、個数など

体重50kgは、体重100kgの半分であると言うことができる。つまり、間隔の他に、比にも意味がある。

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比尺度をもとにした演算について

<計算(カウント)、計算の比、モード、中央値、和、差、平均値>、比

例:体重50kgの人が体重を10%減らすためにダイエットするということは、目標体重が45kgということになる。

比尺度は、間隔尺度、順序尺度、名義尺度で行える演算すべてが実行可能です。




尺度の厳密性とは(最も厳格なものは4つの中で比尺度)

前述した4つの尺度の厳格性の順序やそれを基にした実行可能な演算は以下になります。

尺度の厳しさ:

比尺度 > 間隔尺度 > 順序尺度 > 名義尺度

実行可能な演算:

比尺度 ⊃ 間隔尺度 ⊃ 順序尺度 ⊃ 名義尺度

厳格性は、比尺度がもっとも高く、間隔尺度、 順序尺度、名義尺度が続きます。また、比尺度が実行可能な演算はもっとも多く、間隔尺度、 順序尺度、 名義尺度が続きます。

これらの尺度の意味と実行可能な演算を理解しておくと、調査票づくりにおける選択肢の設定がより厳密になるとともに、得られた調査結果をどのように加工して集計し、その結果からどのような意味合いを抽出すればよいのかが比較的容易になります。 後編では、前編の内容をもとに調査票の回答方法の種類や質問文作成の留意点などについて述べたいと思います。




取材協力:GMOクリエイターズネットワーク株式会社

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