物が行き渡った現代社会では顧客志向のマーケティングが大切

高度経済成長期までのマーケティング活動は供給以上に需要が存在することを前提に、メーカーや流通業者の視点から「どのようにすれば大量に素早く生産し、安価に流通させることができるか」を目的としていました。しかし、高度経済成長が終了し、生活必需品が社会に行き渡った状態になり、消費者(各企業にとっての顧客)が本当に欲しいと思う物しか購買しなくなったため、顧客の視点から「顧客は何を求めているのか、現在の製品のどこが不満なのか、何を改善する必要があるのか」を追求する必要(顧客志向マーケティング)が高まってきました。

これをマーケティング用語で言い換えると、企業側の視点のみで製品を製造・供給する「プロダクトアウト」から、消費者ニーズを的確に捉えて物づくりを行う「マーケットイン」の時代になり、自社の製品やサービスに対する顧客の満足をどのように向上させるかが、企業を成長させる最大の要因となっております。

図1:社会変化にともなって生じる顧客満足度調査の必要性

図1:社会変化にともなって生じる顧客満足度調査の必要性



顧客維持への注力がマーケティングコストを低減

企業活動において、新規顧客の獲得にはマーケティングやプロモーションに莫大な費用がかかり、一般的にそのコストは既存顧客維持の5倍になるとも言われています。これは、通常の商取引で考えた場合、既存の顧客からのリピートオーダーの受注に対するコスト・労力と、新規開拓において初めての顧客にアプローチして受注につなげるコスト・労力とを比較すれば、容易に想像できるでしょう。

既存顧客の流出を防止し、今取り引きしているお客様をどう維持するかという「カスタマーリテンション(顧客維持)」にフォーカスしていくことは、全体のマーケティング費用を低減することにダイレクトに結び付くため、経営的な視点から見ても効率がよいと言われています。




顧客満足度調査の目的と設計について

(1) 顧客満足調査の目的
こうした企業経営に効率がよい顧客維持をはじめ、企業と顧客の関係性を明らかにするために有効なのが顧客満足度調査だと言えますが、実施の目的としては以下の2つが挙げられます。

1. 顧客が不満に思っていること、つまり製品やサービスの改善点を抽出すること

2. 抽出されたいくつかの改善点の優先度(緊急度)を設定すること

つまり、現状を把握して、改善案の策定に役立てることが顧客満足度調査の目的だと言えます。


(2)顧客満足度調査の設計
次に、調査を実施する前に、明らかにしたい改善点から逆算して、調査票の具体的な設計と設問への落とし込みを行います。その場合の流れは以下になります。

1. 改善点を抽出するために必要となる情報は何かを考える。

2. 1.を得るために、顧客は製品やサービスのどのような点を重視しているかを考える。

3. 2.の把握のために、具体的にどのような設問にするかを考える。

この場合に参考になるのが、以下に挙げた「顧客の購買行動プロセス」を構成する要因に分解することです。


(3)顧客満足度調査のベースとなる購買行動の捉え方
顧客が製品やサービスを購入し、それらを利用していくプロセスにおいて、製品やサービスを構成する要因別に、満足している点、不満に思っている点が生じてきます。製品やサービスを構成する要因は、具体的には、お店の立地、商品の価格、商品棚での陳列方法、販売員の接客、パッケージの色やデザイン、商品自体の機能や使い勝手、使用過程での丈夫さ、メーカーやお店のアフターサービス(サポート体制)などが挙げられます。

これらが以下(図2:一般的な顧客満足度調査における満足度の捉え方)になりますが、こうしたさまざまな要因が、顧客満足度調査の調査項目として設問に落とし込まれていきます。 これらの項目をより具体的に、より詳細に抽出するかどうかが、正しい調査結果を導くためのポイントとなるため、事前にグループインタビューなど定性調査を実施して、実際に製品やサービスに対する消費者の意見を反映することもよく行われています。

また、この調査票作成でもう一つの重要なポイントとなるのが、消費者が感じる製品やサービスに対する総合的な満足度で、この総合的な満足度と、製品やサービスを構成する要因別の満足度の相関関係を明らかにすることも重要なポイントとなります。 さらに、もう一度買いたい、もう一度利用したいと思う再購入意向を調べることも欠かせない調査項目だと言えるでしょう。

図2:一般的な顧客満足度調査における満足度の捉え方

図2:一般的な顧客満足度調査における満足度の捉え方


(4)顧客満足度調査の設問例
以上の考え方もとに作成した一般的な調査票の例は、以下のようになります。

図3:顧客満足度調査の設問

図3:顧客満足度調査の設問




顧客満足度調査の結果とその利用法

1)顧客満足度調査の結果
上記の調査票をもとに郵送調査やインターネット調査など、さまざまな手法を通じて実施された顧客満足度調査の結果は、以下のようなクロス集計表やグラフとしてアウトプットされます。

図4:顧客満足度調査の集計表例

図4:顧客満足度調査の集計表例


図5:顧客満足度調査の総合満足度アウトプット例

図5:顧客満足度調査の総合満足度アウトプット例


(2)顧客満足度調査の利用例
最後に、こうした調査結果を活用していく方法について紹介します。当初の顧客満足度調査の設計方針に従って得られた集計結果(以下のレーダーチャート)をもとに、明らかにしたい点を抽出し、改善策の具体化に結び付けていきます。

図6:顧客満足度調査のアウトプット例(サービス特徴別の5段階評価満足度平均値)

図6:顧客満足度調査のアウトプット例(サービス特徴別の5段階評価満足度平均値)


アウトプットの分析
・総合満足度は男性3.7、女性3.5でそれほど大きな差はないようです。

・女性は「施設の見栄えがいい」「設備が最新の物である」の評価が男性より高いが、「個人の要望に合わせて対応してくれる」「顧客の要望や問い合わせに対して迅速な対応をする」で評価が低くなっています。

・また「個人の要望に合わせて対応してくれる」「顧客の要望や問い合わせに対して迅速な対応をする」は、男性でも他の項目より若干低めの評価となっています。その他の項目は4.0近辺で平均的な評価結果です。


改善策への具体化
・従業員のサービス提供に対する「迅速さ」「礼儀」は悪くないのに、「個人の要望に合わせて対応してくれる」「顧客の要望や問い合わせに対して迅速な対応をする」の2つの項目の評価が低いのは、対応がマニュアルに則った杓子定規な物になっていないかということが推測できると思います。ただ、この仮定は本当に正しいかどうかは、詳細な検証が必要ですが、こうした仮定が正しいと判明した場合、今までのクレーム事例の洗い直し、競合のサービス対応の調査、マニュアルの再検証、従業員ミーティングの実施など、従業員の意識を変革するためには、どのような施策が必要かを検討する必要があるでしょう。また、施設に対する評価が、男性に比べ女性の評価があまり高くないという理由については、施設の設計コンセプトの再検証、これまでのマーケティングの方向性検討が必要とされると思います。 




まとめ:リピーターを増やすための要因を発見するのが顧客満足度調査

顧客満足度調査では、ただ単に顧客がどれくらい満足しているかを調べるのではなく、顧客が製品やサービスのどのような点に満足していたり、不満に思ったりしているかを、具体的に製品やサービスを構成する要因別に探し出すことが重要です。ですから、顧客満足度の数値が上がったり下がったりしたからと言って一喜一憂してもあまり意味がありません。

つまり、顧客満足度調査とは、顧客を維持するために何をすればよいか、その要因を発見するための調査であると極論してもよいのではないでしょうか。  ある化粧品会社では、販売員の評価を売上ではなく、顧客満足度調査を利用して、お客様のリピート率=満足度の高さを基準にしている例もあるそうです。本来の顧客満足度調査とは、そういった使われ方をすべきではないかと思います。




次回は、顧客満足度調査のより具体的な手法をGMO-JMIの独自アプローチを例に紹介したいと思います。