生き残りをかけて、成熟市場深耕りと成長市場(アジア)進出の二者択一が求められる

2000年以降の日本経済は、デフレによる企業収益悪化や少子高齢化の進行によって成長率は停滞し、2008年のリーマン・ショックによって景気はさらに悪化しました。その一方、2010年中に中国は、GDPで日本を抜いて世界第二位の経済大国になることが確実になるなど、東アジアにおけるビジネス拠点は、日本市場から成長著しい中国にシフトするようになっています。そうした中、日本企業が持続的な成長を維持するには、

①.ほぼ全てのインダストリー(産業)で市場が成熟してしまった国内マーケット(広くは先進国市場)の中で、圧倒的なサービス優位や持続的な技術イノベーションを起こしながら、より高次元での競争を行う

②.中国をはじめとし、総体として市場のパイが拡大することが確実視されており、未成熟な東南アジアマーケットで競争し、パイを獲得していく道をめざす

という二者択一が求められています。そもそも企業経営とはいくつかの現実的なオプションの中から、最も効果的・効率的な選択肢を選ぶものです。多くの国内中堅中小企業にとって、これまで中国を含む東南アジア諸国は人口ボリュームこそあれ、平均所得の低さや購買単価の低さが顕著であったことから、②の選択肢の重要性が相対的に低かった経緯がありました。

ところが昨今、上海・北京など中国の都市部でかなりのボリュームをもって富裕層が台頭し、不動産バブルが起きているなど、成長著しいアジア市場に進出することが、経営上も現実的かつ有効な選択肢となってきたと言えるでしょう。




成長市場(アジア)攻略のフレームワークで特に重視すべきは「消費者ニーズの把握」

さて、中国市場に打って出ることを考えた場合、攻略のフレームワークとしては以下のような事項が挙げられます。

①.その国の経済状況はどうなっているのか?どのような規制があるのか?

②.どのような市場なのか?マーケットで一体何が起こっているのか?

③.顧客は誰なのか?顧客のニーズは具体的にどんなことなのか?

④.自社の競争相手は誰で、特にどんなことに気をつけなければならないのか?

⑤.競争相手と比較した際の自社のポジションはどうなっているのか?

この中で、①、②などの一般的な情報については、最近多くの書籍や雑誌、ウェブサイト、行政機関や調査機関などを通じて取り寄せられます。何より、この中で中国で製品やサービスを売りたいと思っている企業が力点ポイントとして置くべきは、③の「顧客ニーズの把握」です。③をしっかりと掴んだ上で、④、⑤で確たる戦略を構築していくことが求められます。

1990年代までにも、中国市場へ進出した日本企業はありました。ただ、自動車、エレクトロニクスを中心として、日本や欧米市場に向けてコスト競争力強化のためにアジアでの現地生産を行い、現地でも販売するという流れでした。2000年以降中国は、2001年に加盟したWTOとの公約もあり、消費市場の開放が進むようになったため、日本の化粧品、飲料品、トイレタリー製品などのメーカーも中国進出を図るようになっています。例えば以下は、これまで積極的に中国進出を行い、ある程度成果を上げてきた日本企業の成功事例です。


・各社の中国市場導入の例

<ユニ・チャーム株式会社>
P&Gのように各国で大規模な消費者調査を行うための投資はできないと、現地にとことん入り込んで、一人ひとりの顧客に対する家庭訪問を繰り返し、足と目で顧客ニーズの掘り起こしを行い、中国でのシェア拡大につなげている。

<株式会社コーセー>
日本の消費者調査だけを基に製品を開発していた体制を改め、今回の新製品は中国や東南アジアでも調査を実施し、現地の消費者ニーズを商品の設計段階から取り組むという試みをスタートしている。

<キリンビバレッジ株式会社>
キリンビバレッジの「午後の紅茶」は、中国やタイ、ベトナムでも人気商品になっているが、日本国内とは異なる全体に丸みを帯びたペットボトルデザインを採用している。角形が日本ほど好まれないという調査結果を、デザインづくりに活かしたことも成功要因の一つだという。



成長市場におけるマーケティングリサーチで意識するべき2つのフェーズ+進化

マーケティングリサーチの2つのフェーズ+進化

マーケティングリサーチの2つのフェーズ+進化


上記の企業が中国などに進出する際に、採用されたマーケティングリサーチの手法はエスノグラフィ(行動観察)調査、グループインタビュー(座談会による意見交換)、インデプスインタビュー(対面方式のインタビュー)など、いわゆる「定性調査」と言われるものです。これらは、マーケティングリサーチのフェーズ1と言えるもので、会場準備や調査モニタの収集など、マンパワーによるところが多いことから、相応の金額がかかります。

ただし新しい市場に参入する際、「中国では日本と違い、こういった分野で、こんなニーズがあるのではないか?こんなことがこれから起こるのではないか?」といった人々の行動や考え方に関する仮説を立案するために、必ず行うべきベーシックス(基本)と言えるでしょう。

次に、マーケティングリサーチのフェーズ2と言えるものが「定量調査」です。統計に裏打ちされた一定量のサンプル調査を通じて、その集団全体の意識傾向を把握し、フェーズ1で立案した仮説を検証しようとするものです。具体的には会場調査(会場に人を集めてアンケートを行うもの)、電話調査(電話によるアンケート)、訪問面接調査(訪問し1人1人にアンケートするもの)などがありますが、これらを実施するためにも多くのマンパワーが必要とされることから、相応の費用がかかります。

ここで、マーケティングリサーチのフェーズ2の進化形として最近注目されているのが、インターネット調査です。これは、会場を設置せず、電話も訪問もせず、オンライン上で調査モニタの方々に接するという方法を取ることにより、通常の定量調査に比べて、約10分の1の費用で済むことから、極めて高いコストパフォーマンスが達成できると期待されているものです。スピーディーにデータ集計できるという点も、仮説と検証を早いスピードで回さねばならない高次元の競争を強いられている企業にとって、優位な点の一つとなっています。




今後さらなる成長が期待される中国市場ではインターネット調査が有望

中国市場でのインターネット調査の動向グラフ

中国市場でのインターネット調査の動向グラフ


中国をはじめとした東アジアの市場は、まだまだ発展途上にあるため、マーケティングリサーチもまだまだ手探り段階で、フェーズ1の「定性調査」をしっかりと行うことが重要な段階だと言えます。

しかしながら、これから中国経済がさらに成長していくことが確実視されている状況を考えると、かなり早い段階で、低コストで効果的な仮説検証を実施できる「インターネット調査」の利用が広がっていく可能性は大いにあるのではないでしょうか。

1990年代後半の日本は、まさに第二の黒船到来という時代でした。アメリカからの市場開放圧力を背景に、当時の政府が行った「金融ビッグバン」「大店法改正」「再販制度の見直し」などの規制緩和によって、海外の巨大企業が次々に日本進出を果たしました。ただ、それらの企業では、グローバルスタンダード型の製品を投入するだけでは日本市場に受け入れられないため、日本の消費者の特性に合わせたマーケティング戦略や、製品・サービス開発に取り組みました。

当時、そうした海外の企業ニーズに応えるために、外資系のマーケティングリサーチ会社が日本国内に数多く設立されました。品質の高い定性調査手法を日本に持ち込み、仮説検証型の分析手法を改めて日本市場に問うた彼らもまた、最終的にはフェーズ2の進化に伴いインターネット調査を多用するようになりました。結果、日本国内のインターネット調査が、市場調査全体の40%を占めるに至った経緯を振り返ってみると、成長が加速する中国でインターネット調査が普及する日も近いのではないかと考えます。



次回は、「中国市場攻略に向けたフレームワーク<中編>」として、中国をはじめとする東アジアでのインターネット調査事情について詳しく述べてみたいと思います。




取材協力:GMOクリエイターズネットワーク株式会社

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