回答確信率とは

「回答確信率」とは、アンケート調査などの定量調査で調査対象者が回答するまでの反応を「感性分析」の仕組みを使って可視化する手法のことで、調査結果がどの程度確信を持って回答した結果なのかを明らかにすることを目的としています。

仮に、調査対象者が4つの選択肢からなるSA(シングルアンサー:単一回答)設問に回答して、その結果「選択肢2」が選択されたとします。従来のアプローチにおいては、回答に至るまでの調査対象者の選択過程がまったく分からなかったため、「調査対象者は『選択肢2』を選択した」という結果がすべてでした。

しかし実際のところは、「選択肢2」と「選択肢3」で長く迷ってから回答したのか、「選択肢2」と「選択肢4」で少しだけ迷って回答したのか、あるいは「どれでもいいや」といい加減に回答したのかもしれません。いずれにしろ人間の選択は100%確信して行うものではなく、「選択肢2=70%、選択肢3=30%」といった曖昧なものです。「回答確信率」は感性分析を利用してその割合を可視化することによって、調査対象者がどのように迷って回答したかといった選択過程を明らかにします(図1)。

図1 従来の定量調査と回答確信率との差異



回答確信率の仕組み

■計測の仕組み
回答確信率の測定は、本連載でこれまで解説してきた「感性分析」の仕組みを活用して行います。これは、株式会社夏目綜合研究所が開発・提供する「感性判定解析システム」と、GMOリサーチが提供する「アイトラッキング」と呼ばれる視線計測システムを組み合わせたものです。具体的には、図2のように、調査対象となる設問と4つの選択肢を、アイトラッキング機能を備えた据置型のアイトラッカーのモニターに表示し、調査対象者は選択肢から回答を選択したうえで、口答にて回答してもらいます。(測定時間1設問:10秒程度)

図2 調査方法の概要

アイトラッカーは回答中の調査対象者の眼に近赤外線を照射することで、「視線」の遷移と「瞳孔反応(拡大・縮小)」を計測します。これらを通じて取得した「注視点」と「注目度の高さ」をベースにしながら、モニター内をx軸、y軸の座標で区分して「どこを」「どの程度」注目しているかを分析します。


■回答確信率算出の仕組み
上記で分析された数値から算出される、全体の注目度総数に対する各選択肢エリアの注目度割合が回答確信率になります。下の図3では、濃い赤のエリアが注目度の高い場所を示し、全体の注目度総数に対して「好き」が50%、「やや好き」が30%、「やや嫌い」「嫌い」がそれぞれ10%注目されていたことが分かります。

図3 回答確信率の算出




結果の解釈

算出された回答確信率の結果に関しては、次の3つのポイントから解釈が行われます。

①回答確信率の分散度合い
視線がどの程度集中しているのか、または分散しているかに注目します。例えば、回答確信率が70%以上であれば、ある程度確信を持って回答したと判定し、70%未満で全体に分散していれば、確信を持って回答したとは言い難いと判定します。

図4 回答確信率の数値の解釈


②口答回答との一致具合
回答に至るまでの選択過程(回答確信率)と口答回答に明らかなギャップが見られる場合は、口答回答の結果を注意して受け止める必要があります。

図5 回答確信率と口答回答との整合性


③注目度総数の数値
アイトラッカーを用いて瞳孔反応を計測することで、設問や選択肢全体に対して調査対象者が注目しているか(関心が高いか低いか)を判定します。

図6 注目度総数の数値の解釈


これらの結果の解釈をもとに、「注目度総数(高⇔低)」「回答確信率の分散度合い(分散⇔集中)」をそれぞれ縦軸、横軸とするマトリックスで表すと、図7のように回答に至るまでの調査対象者の考え方を4つのグループに分類できます。

グループ① 注目度総数=高/分散度合い=分散
高い関心を持って選択をしているが、選択肢をどうしてもひとつに絞りきれずに、注目度が複数の選択肢に分散してしまう。
     ↓
「ひとつに決め難い」と迷いながら回答
グループ② 注目度総数=高/分散度合い=集中
高い関心を持っているうえ選択肢もひとつにしか注目していない。確信を持って、回答確信率の高い選択肢を選択している。
     ↓
「これがいい!」と確信を持って回答
グループ③ 注目度総数=低/分散度合い=分散
あまり関心が高くなく、同時に複数の選択肢上を視線がさまよっているため、深く考慮せず、目に付いた選択肢を選択している可能性がある。
     ↓
「どれでもいいや…」と深く考慮せずに回答
グループ④ 注目度総数=低/分散度合い=集中
あまり関心は高くないが、ひとつの選択肢に絞って選択しているため、高い確信はないが、一応これではないか、という選択肢を選択している。
     ↓
「とりあえずこれでいいか」と思いながら回答


図7 回答確信率の分散度合および注目度総数の高低から判断できる調査対象者の考え方

これ以外にも、上記②で紹介した「『選択肢2』を注目していたにもかかわらず『選択肢1』と口答で回答した」といったケースも想定されます。ただし、今回はあくまで「注目度総数」と「回答確信率の分散度合い」の結果にのみ絞って解説を行っているため、「回答確信率と口答回答との不一致」のケースについては次回の実例の中で改めて紹介します。




まとめ

今回の内容を要約すると以下の4点になります。

1.回答確信率は、感性分析を応用した調査手法で、視線の遷移と瞳孔反応(拡大・縮小)を計測することによって、回答選択過程における調査対象者の反応(選択の曖昧さ)を可視化する。

2.回答確信率の測定は、調査の対象となる設問と選択肢を、アイトラッキング機能を備えた据置型のアイトラッカーのモニターに表示する定量調査を通じて実施する。調査対象者は、モニターを見ながら回答を選択し、口答で選択結果を回答する。このときアイトラッカーは、「注視点」と「注目度の高さ」を計測し、モニターの「どこを」「どの程度」注目しているかを分析することで回答確信率を算出する。

3.回答確信率は、全体の注目度総数に対する各選択肢エリアの注目度割合である。全エリアを合計すると100%になる。

4.回答確信率の結果は、「回答確信率の分散度合い」「口答回答の一致具合」「注目度総数の数値」の3つのポイントから解釈する。




次回は、今回解説した回答確信率を用いた調査の実例について取り上げます。