Scanamindの本質的な特徴とは?

今回はScanamindの拡張版であるScanadesignの連載となりますが、その前にScanamindの最大の特徴である「ありのままの概念構造が可視化されること」の本質を再確認したいと思います。このことは、いわば調査対象者の頭の中身をのぞくことだと言えるでしょう。そもそも頭の中にはモヤモヤしたイメージがあるだけで、何かのきっかけを与えなければ、それらは言葉にはなりません。Scanamindは、こうしたイメージを言葉に変換し、その言葉同士の関係性から概念構造を可視化することをめざして開発されたツールなのです。

さて、Scanamindを使った調査では、まず調査対象に関連する12項目の言葉を調査対象者に挙げてもらい、その後12項目それぞれの関係性について4段階で評価してもらいます(図1)。

Scanamindの調査の流れ

調査終了後、量子数理を用いた解析手法で、調査対象者全員分の回答データを処理し、アウトプットしたのが以下の概念構造マップになります(図2)。

Scanamindのアウトプット


■Scanamindの本質的特徴とは?
それでは、ここに表現されている「ありのままの概念構造」とは、具体的に何を意味しているのでしょうか?前回の連載では、このことに関する説明が十分ではなかったために、「Scanamind=ブランド・ポジショニングのためのツール」だと誤って理解してしまった人が多かったので、あえて説明したいと思います。

上記の例で、コカ・コーラを調査対象として挙げてもらった12項目の言葉は、調査対象者がコカ・コーラから想起した概念であり、これを認知心理学では表象(※)と呼んでいます。表象とは人が心の中に形成するイメージで、同じ言葉を聞いたとしても、思い浮かぶ表象は人によって異なるのが普通です(図3)。

(※)英語では"representation"と表現され、外界(心の外部の現実世界)にある(= present)ものが再び(= re)心の中に再現されることを示す。厳密には外界の具体的な「もの」を外的表象、心の中に再現される「イメージ」を内的表象、感覚表象として、認知心理学においては区別している。

表象は人によって異なる

通常、リサーチャーはコカ・コーラという特定の製品やブランドイメージから想起されたイメージで調査票を作成するため、その調査の回答もその範囲を超えることはありません。ところが、Scanamindで調査対象者が挙げた数々の言葉は、コカ・コーラという言葉に含まれるあらゆる概念から調査対象者が想起したものだと言えるでしょう。 つまり、Scanamindの本質は、きちんと具体的に定義されていない、人によって表象が大きく異なる曖昧な対象でも、ありのままの概念構造を可視化できるところにあります。例えば、「幸せ」「平和」といったつかみどころのない概念でも構造化し、マッピング(可視化)することができるのです。

コカ・コーラの場合は、「製品としてのコカ・コーラ」「ブランドとしてのコカ・コーラ」「日常生活の中のコカ・コーラ」「思い出としてのコカ・コーラ」など、調査対象者の数だけ存在する視点をすべて網羅したありのままの概念構造を可視化でき、いわば調査対象者全員の頭の中身をのぞくことができるのがScanamindの最大の特徴です。また、これらのことは、最初に12項目の言葉を挙げることにより、調査対象者自らが思い浮かべたイメージ(=表象)を入力してもらうからこそ可能になっています。



■コレスポンデンス分析との違いとは?
ブランドイメージ調査で、ブランド・ポジショニング・マップ作成時に、広く利用されている手法に、多変量解析の一手法であるコレスポンデンス分析があります。このアウトプットは一見すると、Scanamindとよく似ているのですが、実のところ決定的な差異があります。ここではその違いについて紹介したいと思います。

ちなみに、コレスポンデンス分析は、日本人の研究者が開発した「数量化Ⅲ類」と言われる手法と同一で、数量化という名前が付けられているように、質的な定性情報(順序尺度・名義尺度)を定量的に扱うという目的のために開発されたものです。

以下に一般的なブランドイメージ調査の流れを示します(図4)。

一般的なブランドイメージ調査の流れ

コレスポンデンス分析とScanamindの決定的な違いは、前者が単にリサーチャーの提示した評価項目/選択肢に対する調査対象者の回答結果をマッピングした(=クロス表を見やすく図示した)だけなのに対して、後者は調査対象者全員が想起したあらゆる概念構造を視覚化できることにあります。

コレスポンデンス分析では、リサーチャーの想定している範囲内での結果しか得られないのに対して、Scanamindは分析視点を限定せず、調査対象者全員が挙げたあらゆる概念を取り込むことができます。さらに、それは統計数理では処理が不可能なデータ形式であり、量子数理によるデータ処理ができるScanamindだから可能となったアウトプットだと言えます。

Scanamindは単なるブランド・ポジショニング・マップづくりのためのツールではなく、ある対象物に対して調査対象者全員が想起する概念をあるがままに可視化する仕組みだと言えます。




Scanadesignの発想

Scanamindの拡張版であるScanadesignは、調査対象となるテーマを言葉だけでなく画像に広げたものです。それが可能となるのは、言葉であっても画像であっても、Scanamindを使って表象化(心の中のイメージに転化)ができれば、比較可能な概念にすることができるからです。(図5)。

言葉と画像の表象化

Scanadesignはクリエイティブやプロダクトなどデザイン全般に関する概念構造を可視化するプロセスに最適です。旧来の調査手法では、デザインに関する調査も、他の調査同様インタビューを行って得られた「持ちやすい」「色が派手」など断片的な定性情報をもとに、リサーチャーが全体的な概念構造を想定する程度の方法しかありませんでした。しかも、そのアウトプットは調査を実施するモデレーターや分析するリサーチャーの能力、想定に大きく左右されていたのです。

しかし、Scanamindは、前章で述べたように、プロダクトデザインに対する調査対象者全員の、バイアスのかからないありのままの概念構造を可視化することが可能となっています。




まとめ

今回のまとめは、以下の3点です。

1.Scanamindは言葉の背後にある、あらゆる視点を網羅した概念を取り扱うことが可能なうえ、ありのままの概念構造を可視化することができる。

2.Scanamindのアプローチは、リサーチャーが想定したフレームの中で調査を実施し、その集計結果であるクロス表を見やすく表現したコレスポンデンス分析とは出発点から異なる、まったく別の発想から成り立っている。

3.Scanadesignは、Scanamindの拡張版で画像を取り扱うことができる。また、画像を表象化することで他の画像や言葉との概念比較が可能。




次回は、Scanadesignの調査の流れおよびアウトプットを示します。

Scanadesign の調査の流れで、Scanamindと大きく異なるのは、調査の初期段階に「画像の表象化プロセス」という、事前準備の時間が組み込まれていることです。表象化とは対象物を見て、心の中のイメージに転化することですが、下記のようにバッグなどの複数の画像をいきなり提示されても、調査対象者はそのデザインについてのイメージをうまく概念化できず、短時間で評価を下すことができません(図6)。そこで、いくつかの画像から好きなバッグのデザインを選択してもらう準備の時間を設けて、意識しないうちに表象化ができるようにしていくのです。こうした「画像の表象化プロセス」についても、具体的事例をもとに、次回詳しく解説したいと思います。

プロセスの事例



※「Scanamind」に関わる技術は株式会社クリエイティブ・ブレインズが特許法に基づく特許権を取得しています(特許第3335602号,特許3278415号,特許3417941号,特許3638943号,特許4824837号)。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
※「Scanamind」は株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※「Scanamind」公式サイト
http://www.scanamind.jp/